フェイスリフト・リフトアップ・たるみ治療総論
たるみ治療を取り巻く環境
「フェイスリフト」とは文字通り解釈すると、お顔をリフトアップするという意味ですが、狭い意味合いでは切るしわ・たるみ取り手術のことを指します。しかし、顔をリフトアップするといったキャッチフレーズや、フェイスリフト風の施術名で宣伝されている施術方法は数多くあります。
メスによる手術を伴うフェイスリフト術や、糸のリフト(フェザーリフト)、韓国式美容鍼とその派生施術、金の糸、さらにはヒアルン酸・ボツリヌストキシンなどの注入・注射系、高周波・超音波・レーザーといった照射系など様々な施術法が、ひとくくりにフェイスリフトというイメージの言い回しで言われております。またクリニックに限らず、エステサロンやマッサージ、コスメ商品までも「フェイスリフト」「リフトアップ」とうたっている場合すらあります。
どこまでが、フェイスリフト(文字通りお顔のリフトアップ効果があるのか)なのかは意見の割れるところですが、明らかにフェイスリフトの意味を成してない、日本語としてもおかしな「フェイスリフト・リフトアップ・ほうれい線解消・・・」といった使い方もあると個人的には感じております。
そんな中で、間違いなく一時的にはある程度お顔が上がりそうなたるみ治療として、メスによる手術を伴うフェイスリフト術と糸のリフト(フェザーリフト)があります。
たるみ治療の問題点
メスによるたるみ治療、フェイスリフト術は、欧米では最近まで盛んに行われていました。しかし、その侵襲の大きさの割に実感できる効果持続期間は短く、最近では低侵襲・縮小手術の方向へシフトしているようです。ミニリフト化の傾向にあり、ミニリフトに糸のリフトを併用する場合や糸のリフト自体を行う場合が多いと言われています。もともと、西洋人・白人は細かいしわが多く、皮膚を切りとって引き伸ばすことに向くと思われます。また、東洋人は皮膚も厚く細かいしわよりも、よりゴルゴライン・ほうれい線・マリオネットラインなど大きなシワばかりが目立つ傾向にあります。このため白人よりも切るフェイスリフト手術がフィットしないことが多いようです。
また、メスによる手術を伴うフェイスリフトも、アンカーに固定するタイプの強力な糸によるリフトアップも、ともにお顔の「正面」の効果には乏しく、今までは本当に良い治療がなかったようにも感じます。そのためかあえて現実逃避的、「木を見て森を見ず」的な治療法やキャッチフレーズが横行していました。
また、実際に老化に対する表現で「ボリュームの増減、目の下がくぼむ・ほほがこける、フェイスラインやあご下に脂肪が増える」といったものを目にします。が、これは本当でしょうか。たるんで単純に「上から下へ」ボリュームが移動しただけではないのでしょうか。
また、たるみ治療については、しわ・小じわ・くぼみなどやほうれい線・ゴルゴライン・マリオネットラインなどに細かく症状や部位で分けて考えられていました。
しわや小じわ治療として、ヒアルロン酸・ボツリヌストキシンのような注入・注射系、レーザー・高周波・超音波などのような照射系治療が繰り返し行われています。毛穴の目立ちにもレーザー・照射系治療やピーリングなどが繰り返し行われています。
これらの小じわや毛穴など皮膚の質感悪化症状も、たるみに起因することは良く知られています。でも、特に「正面から見た際のたるみ」に対する良い治療はなく、現実逃避的治療が行われる傾向にありました。特にコース治療やレーザー・照射系治療では、劇的な変化がないので、お肌の土台を作るという不思議な説明文句が多用されているようです。コース治療や照射系治療を繰り返すという治療も多く見受けられます。
ほうれい線やゴルゴライン、マリオネットラインなどお顔の一部だけに注目した治療やキャッチフレーズも多く見られます。特にヒアルロン酸、ボツリヌストキシン、脂肪、幹細胞、成長因子などの注入・注射療法が目立っています。わずかなしわやたるみの症状に対して繰り返し行うような治療を行ったところ四角い顔になり、かえって老けてしまったという相談も多く、長期的に効果が持続すると言われる注入物を入れたところで、顔面解剖学的に見るとボリュームの不均衡が生じて、一見してそれと分かる顏になってしまいます。
糸による治療
糸によるフェイスリフト・糸でリフトアップするという考え方は以前からあり、初期には切るフェイスリフトの補助手段として結紮用の糸が用いられていました。切るフェイスリフトがその侵襲の大きさの割に実感できる効果の持続期間が短く、敬遠されるようになったこともあり、次第にダウンタイムの少ない治療が好まれるようになりました。そのため糸のフェイスリフト(スレッドリフト)が急速に普及するようになってきました。吊り上げ効果を持続させるために、とげ状の返しやコーン・パッチなどの特殊な構造の糸が用いられるようになりました。
現在、スレッドリフトの分類は混乱していて、製品名由来の名称、製造会社の登録商標による名称、手術法による名称など分類を妨げるように様々な名称が乱立しています。
糸の形状や術式による分類としては、組織を把持する様式の違いによって、トゲタイプ、コーンタイプ、ループタイプがあり、フローティングタイプ・固定タイプという分類もあります。フローテイングタイプはとげ状のかえしやコーンがお互いに向かい合うように反対方向を向いていて、組織を中央に引き寄せるものです。固定タイプのものは一方向を向いていて、骨や筋膜などの固定源(アンカー)に固定する方式です。ループタイプの糸も固定タイプに分類されます。
また、金の糸や韓国式美容鍼から派生したショッピングスレッドやリードファインリフト・ウルトラVリフトなどのリフトアップ術は、従来の糸によるリフト・スレッドリフトとは一線を画したものであり、引き締めタイプの糸とも呼べるもので、レーザー・高周波・超音波による引き締め術と同じ範疇に入るものと考えられています。
従来の糸の素材としては、溶けない糸はポリプロピレンやゴアテックス製、溶ける糸は吸収性PDSやポリ乳酸でできています。
糸によるフェイスリフト(スレッドリフト)の説明や広告でよく目にする「本数は、老化による経年変化に応じて適宜追加が必要である」という考え方には、糸によるフェイスリフトでは中長期的効果が望めないという厳しい現実を覆い隠す隠れ蓑としての役割があると考えられます。すなはち、患者さんが術前に想像しているよりも効果が弱いこと、特にお顔の正面の効果に乏しく、効果の実感を得られない事、長持ちしない・中長期的効果はないに等しいことは間違いないところです。
やはり、わたくしが本物の効果と思うのは数年後にもある程度の効果が持続して感じるスプリングスレッドや切るフェイスリフト・切る手術です。特に伸縮性のある糸のフェイスリフト(スプリングスレッド)は切る手術のフェイスリフトを凌駕する存在であると確信しています。スレッドリフトの究極の新化版が伸び縮みする糸:スプリングスレッドです。わたくしが、この糸と出会った時、自然界の究極の調和を目の当たりにして畏れの念を抱くような感動を覚えました。顏のようなよく動かす部位で長期的に効果を維持するためには、まさに伸び縮みが不可欠であることは自明の理です。スプリングスレッドをうまくカーブさせて入れることにより、中顔面の効果まで出すことができます。
新時代のトータルフェイスリフト、スプリングスレッドと眉下切開
スプリングスレッドと眉下切開の組み合わせは最高のたるみ治療です。スプリングスレッドは頬だけではなくコメカミ、中顔面、首にも大きな効果があり目周りのリフトアップ効果も強いです。そして眉下切開(眉下リフト)は目周りのリフトアップとひたいのしわに大きな効果があります。
スプリングスレッドと眉下切開を併用すると従来のトータルフェイスリフトを凌駕するほどの患者さんが実感できる効果を出せる場合もあると感じています。何と眉下切開(眉下リフト)とスプリングスレッドを受けた方に20歳若返ったと言われたことが何度かあります。
わたくしも手術を通してスプリングスレッドの効果を確信するのは、術後の患者様の反応です。多くの方が、その効果にビックリされています。今まで様々なリフトアップ術を長年受けてきた方が、「初めて効果にビックリしました!今までお金を捨ててきた感じもします」と嬉しいお客様の声を頂くこともあります。
取材協力:六本木境クリニック
境 隆博 院長
東京都港区六本木3‐7‐1THE ROPPONGI TOKYO 207
TEL 03-6441-0691