最新治療レポート

相関のうつ病患者は9年間で1.7倍に

ストレス社会の病理広がる
20年版国民生活白書で警鐘鳴らす

相関のうつ病患者は9年間で1.7倍に

 現代社会は「ストレス社会」と言われて久しい。ストレス増大はうつ病という「心の病い」の病巣を悪化させ、いじめ、家庭内暴食など現代が抱える深刻な社会病理を生み出している。最終版となった国民生活白書(平成20年版)でも、その割合は6割にのぼり、15歳~19歳の未成年でも半数を超えるというから事態は深刻だ。さらに国際比較調査でも日本の15歳生徒の3割が「孤独感」をもち24か国の中で断トツという不名誉な結果を出している。経済的に恵まれる社会でありながら、孤独とストレスにさいなまれている子どもの姿が浮き彫りになったことは憂慮すべき社会問題といっていい。一方「身体因性」「内因性」「心因性」の3つが相互に作用し発症していくといわれるうつ病も、ストレス増大との相関から推計患者は増加傾向にあり、96年から2005年の9年間で実に1.7倍へと転じたことを報告している。また、増え続ける自殺者数や児童虐待の相談件数さらには現代病理の象徴ともなったひきこもり、いじめなど、その病根にうつ病が関わるケースは少なくない。うつ病対策は、喫緊の課題と警告する。

 国民生活白書は、2009年の消費者庁発足でそれまで作成してきた内閣府生活局が廃止され、20年を最後に発刊されていない。したがって20年生活白書の最新版となる。
 その中で「ストレス社会と現代的病理」について報告のページを割く。まずストレスを感じる人の統計値を算出した。それによると「強く感じる」「やや強く感じる」とした割合は57.5%と過半数を占め、40代で最も割合が高い。20代~50代のいわゆる〝労働生産世代〝では実に6割もの人がストレスを感じていることがわかった。
 深刻なのは、15歳~19歳の未成年の半数以上がストレスを抱えているという結果だ。別の国際比較調査でも、日本の15歳生徒の3割(29・8%)が「孤独感」をもち24か国(2位カナダでも7.6%)の中で断トツという不名誉な結果を出している。経済的に恵まれる社会でありながら、孤独とストレスにさいなまれている日本の子どもの姿が浮き彫りになったといえよう。
白書では、憂慮すべき事態として警鐘を鳴らしつつ、その対策を講じるべきと提言する。
 ストレスはまた母親たちにも忍び寄ってきたとして、子育て中(妊娠中もしくは出産後3年未満)の女性を対象にした調査も明らかにしている。そして「社会から隔絶し自分が孤立している」とする回答が4割にのぼるなど、ストレスは母親たちにも忍び寄ってきたと白書は述べる。
 一方、「身体因性」「内因性」「心因性」の3つが相互に作用し発症していくといわれるうつ病も、ストレス増大との相関から推計患者は増加傾向にあり、96年から2005年の9年間で実に1.7倍へと転じたことを報告している。
『最近の医学では、うつ病は尽きるところ、脳のある部分の細胞がストレスに弱いとする研究もある。ストレス負荷で人は副腎皮質からはステロイドホルモン、交感神経と副腎髄質からはカテコールアミンなどの物質を分泌する。これら物質はストレスに対抗する役割を担うが分泌状態が長く続けば身体に負担がかかる。本来はかかり過ぎないようにブレーキが働くが、このブレーキが弱く、脳に負担がかかった結果、うつ病になるのではないかと推察される』と、ストレスとうつ病との関係性を白書が論じたことはめずらしい。いや昭和31年の白書発刊以来、初めてといっていい。
ある意味、それだけストレス社会が及ぼす現代の病巣、うつ病の深刻さを物語っているといえよう。
増え続ける自殺者数や児童虐待の相談件数さらには現代病理の象徴ともなったひきこもり、いじめなど、その病根にうつ病が関わるケースは少なくない。
白書の報告でも、うつ病と自殺は相関するとして、98年以降3万人を超え高止まり傾向を示す。またさらに深刻なのが児童虐待やいじめの増加で、
児童虐待の相談件数は2007年で4万件を超え、90年から17年間で37倍に増え、いじめは認知件数で2007年統計値10万件を突破している。
いずれにしてもストレスが起因するうつ病対策は、喫緊の課題であることは間違いない。そのヒントは別記事に掲載されているので、ぜひあわせて読んでいただきたい。

↑ページの先頭へ戻る