臨床現場に生かしたいエビデンス確かなサプリメント その一
2015年機能表示スタート
一方で根拠なき表示製品に「取り締まり強化」
研究の歴史古く、信頼性高いエビデンス多い乳酸菌関連
特許物質シルクフィブロインは、糖尿病、腎機能改善データで一歩リード
風評被害から復活
アガリクス「ABMK-22」は米国国立がん研究所でも研究対象
消費者庁食品表示企画化が中心となり、サプリメントの機能表示が現実味を帯びてきた。アベノミクス第三の矢、成長戦略のひとつであることはいうまでもない。2015年春、エビデンスをもつサプリメントの中にはFunctional Claimを堂々とつけた製品が市場に流通する公算が大きい。しかし一方で、医薬品まがいの表示に対して薬事法違反、景品表示法の取り締まりは止まらない。つい先日も、トマト成分を含むサプリメントが「寝ている間に勝手にダイエット」等と記載して販売していたサプリ販売会社へ、記載内容に根拠がないということで景表法に基づき、再発防止を求める措置命令を出した。この例に限らず、効果へ対する根拠について、明確に回答ができる業者がどの程度いるのか。今回の件は、氷山の一角であろう。医療従事者がこのような根拠なきサプリメントを取り扱うわけにはいかない。きちんと科学的根拠のある成分を含み、実際に体感や効果のあるサプリメントを取り扱う必要がある。そこで本紙JHMでは連載で、大学や病院等と連携しエビデンスをしっかり取り続けているサプリメントを掲載していく。医療機関だからこそ信用あるエビデンスをもつサプリメントの情報を収集し、臨床現場に生かしてもらいたい。
最初に着目したのは乳酸菌だ。2012年に乳酸菌がインフルエンザに有効だという情報がメディアで多く報道され、一部スーパーではヨーグルトが品切れになった。その中でも特に、明治が発売した機能性ヨーグルト『R-1』は爆発的に売れた。
さらに今年はこれに続き、各社が自社の乳酸菌の抗インフルエンザ効果や抗ウイルス効果を調査研究し続々と論文を発表。今年11月には、インフルエンザ需要を狙い、キリン、日本ルナ、カゴメ、チチヤスなど多くの乳製品メーカーから乳酸菌関連の新商品が出ている。
そんな中、原料メーカーでもあるキティーでは、健康な乳幼児の腸内に住み着く乳酸菌の中から、免疫バランスの改善に優れたクリスパタス菌KT-11(ラクトバチルス・クリスパタスKT-11)を発見し、現在は原料とあわせ商品の提案も行っている。
クリスパタス菌KT-11は通常分娩で生まれた子供が帝王切開で生まれた子供と比較しアレルギーが少ないという海外の論文を元に研究を進めたところ発見された乳酸菌のひとつだ。アトピー性皮膚炎や、アレルギー性鼻炎の改善、さらに腸内免疫の増強等に効果があるとこれまでに日本酪農科学会シンポジウムや日本畜産学会などで発表されており、FOOD Style、New Food Industry、食品工業などの専門紙にも論文を掲載している。
さらに2013年9月には日本酪農科学会シンポジウムにて抗インフルエンザ作用を有することを発表。特にキティーが展開するクリスパタス菌KT-11はすべて国内産の原料を使い、また、培養で用いる培地に関しても、合成培地はもちろんアトピーの元ともなる乳や大豆も一切使用しておらず、高い安全性が確認された乳酸菌といえよう。
また来年創業100周年を迎えるビーアンドエス・コーポレーションによると、医療機関専用での乳酸菌生成エキスの需要が伸びているという。
この乳酸菌生成エキス「アルベックス」は、16種類の乳酸菌を豆乳培地で発酵後、1年間熟成させるという特許製法で作られている。栄養療法を取り入れている病院や内科・歯科など全国800以上の医療機関ですでに導入されている同商品だが、ここ1年でさらに美容クリニック、皮膚科、耳鼻咽喉科からの新規問合せが増えてきている。
従来の外的治療に加え、効率的に腸内環境改善と免疫調整を行い、身体全体のバランスを内側から整えられるという点が注目されている。「アルベックス」は多くの医療機関と共同研究を行っており様々な研究報告・臨床事例を報告しているが、2012年10月には「肌のキメ改善」にも効果があるという報告を日本美容福祉学会にて発表した。
これによると、モニター試験の結果、乳酸菌生成エキスを3か月摂取することで皮膚の微細構造(皮溝の直線性と交点数)が有意に向上した。腸内環境と肌状態は密接な関係があると改めて実証したといえよう。
一方業界の通説として「生きている」乳酸菌が効果的だという風潮がある中で、ある大手飲料メーカーが今年の新商品で使用したのが、FK-23菌というあまり聞きなれない乳酸菌である。
原料メーカーのニチニチ製薬によると、FK-23菌は加熱処理をした乳酸菌で、他の乳酸菌と比較すると5分の一程度の大きさのため、一度に大量の乳酸菌を摂取することができるという。
通常の乳酸菌ドリンクであれば200億個程度と言われるが、同社のFK-23菌を使った自社ドリンク「美翔」の場合は4,500億個もの乳酸菌が配合されている。FK-23菌は様々な大学、医療機関と提携し調査・研究を行っており、すでに10の特許を取得している。C型肝炎治療剤、血圧降下剤、抗アレルギー剤などに加え、色素沈着抑制剤としての特許もあり、美肌への効能も明らかになっている。
2012年には北海道大と共同研究を行い、抗インフルエンザウイルス効果について発表。FK-23菌をマウスに与えたところ、肺への炎症性細胞の流入を抑える効果があると実証し、日本乳酸菌学会の優秀発表賞を受賞した。
乳酸菌分野はそもそも、その研究の歴史も古く、蓄積されてきたエビデンスも信頼が高い。
しかし他の分野でもこの10年の間に、有効性や安全性など基礎、臨床試験で多くの研究成果を報告してきたところも少なくない。
たとえばドクターセラムの「シルクフィブロイン」もその中の一つだ。臨床データとして糖尿病に対するトラアイル試験は1,500名にも及ぶ。
さらに今年春には「飲用による血清脂質、糖代謝能への効果及び糖尿病性腎症における腎機能低下抑制についての研究」と題する新たな知見を、第16回国際個別化医療学会でも発表した。(九段クリニック阿部博幸医師他)
シルクフィブロインは、蚕が作り出すシルクのタンパク質のうち約70%含まれる、フィブロインタンパクのみを特殊な製法(製法特許 第4074923号)により抽出したものだ。その構造はナノレベルの多孔性の基本構造を持ち、この複雑な隙間には吸脂性という機能がある。さらに難消化性であることから、体内の余分なコレステロール、脂肪を吸着し、乳化した状態で体外に排出する働きがある。
本研究では、ヒトにおいて多孔性蛋白構成物であるシルクフィブロインを飲用することで血清脂質、血糖値を下降させる働きが得られるかどうか、糖尿病性腎症における腎機能抑制の可能性があるかどうかを、短期的、長期的投与群において検証している。
試験では糖尿病性腎症患者17名に対して、シルクフィブロイン200mgを各食前に経口投与し、腎機能の指標について12か月にわたり追跡した。その結果、血清クレアチン、eGFR共に悪化を示す傾向はなく、腎機能が維持されていることが明らかになった。また、GFRで想定される低下域に入ることなく現状が維持され、低下抑制効果が示された。
かつて風評被害に揺れたアガリクス茸だが、その豊富なエビデンスと共に高い知名度で、名実ともにアガリクスの復活を宣言したのがエス・エス・アイである。昨年協和ウェルネスからのアガリクス事業譲渡を受け、その製品「仙生露」シリーズの店舗チャネル販売のほか、原料・OEM供給もスタートさせた。
相談薬局ルートでの販売が徐々に上向きとなっているほか、同社のハイグレード商品「SSG+」を販売する相談薬局「SSG会ルート」での販売も順調だ。
同社アガリクス原料100%自社国内生産で、子実体に低分子の有用成分「ABMK(アガリクス・ブラゼイ・ムリル・キョウワ)-22」の含有を確認されており、「ABMK-22」は米国国立がん研究所でも研究対象となるなど、βグルカンではない、新規有用成分として研究が継続されている。昨年には「仙生露」のすべてのシリーズでABMK-22の濃度を従来品より高めている。
一方、原料・OEM供給にも力を入れており、原料は乾燥キノコ、FDパウダー、ABMK-22強化パウダー。熱水抽出エキス製剤についても柔軟に対応する。今後、クローズドマーケットや医療機関向けのOEM提案も活発化させていきたい考えで、「100人規模のヒト臨床試験データ、また安全性確保への取り組みなど、説明材料が豊富なので、クリニックからの信頼性は高いはず」と自信をもつ。
安全性については2年間の長期安全性試験のほか、生殖投与、遺伝毒性、免疫毒性、神経毒性なども実施し、問題となる毒性は認められていない。これまで累計400症例のヒト臨床試験を実施している。