水素の健康効果に賛否両論!
悪玉活性酸素ヒドロキシルラジカル除去する特性(日本医大・太田教授)
一方で市場には「疑似商材」も
美容アンチエイジングにも有効、メラニン抑制明らかに
現存する分子の中で最小サイズである「水素」。優れた抗酸化作用があり、最も小さいゆえに脳細胞をはじめとする全身に隈なくいきわたることができる。生活習慣病の原因ともいわれる活性酸素を制御することもできるといわれる水素は、数年前から医療分野だけではなく美容・アンチエイジング分野でも活用されている。ただし、水素は分子が小さいために取扱いが難しい。例えば水素水の場合、安易な方法で箱詰めすると水素は容器外に漏れ出てしまい、消費者の手元に届くころにはただの水となっているケースもあるようだ。「効果がない」と揶揄されることもある水素。近年の水素に関する研究結果や関連商品などを追った。
水素の効能とは
水素による健康効果としては、老化防止、疲労回復、血糖値抑制、便秘の改善、脂肪燃焼などが挙げられる。医療分野はもちろん、アンチエイジング、美容医療の分野でも注目される効果ではある。
「水素は生活習慣病や老化の予防になる」と言われる理由は、水素が生活習慣病の誘発につながる「活性酸素」を制御するためである。もともと活性酸素は、抗酸化作用があるため異物や毒物を分解する特徴を持っている。しかし反面、体内の細胞を傷つけ重要な臓器や細胞、遺伝子にダメージを与え、様々な疾病を誘発したり老化を早める原因になる。
活性酸素は飲酒、喫煙、ストレス、また外的要因としては排気ガス、酸性雨、紫外線などの影響で発生すると言われる。また激しい運動をするアスリート達は、筋肉に大量の酸素を送り込んでエネルギーを作り出すとともに取り込まれた酸素の一部は体内で活性酸素になる。このため通常の細胞や血管・内臓などにダメージを受け、老化や病気を誘発させることが多い。
これに対して水素は、酸化と真逆の働き(還元作用)を行うため活性酸素の誘発を制御することができる。とくに、活性酸素の中でも悪玉活性酸素の「ヒドロキシルラジカル」を除去する特性があると、日本医科大の太田教授(細胞生物学)による実験で実証された。また水素は非常に小さな分子であるため、同じ抗酸化物質のビタミンやポリフェノールでは通過できない脳内の血液脳関門を通過することができ、脳細胞に起因する疾病予防にも効果を発揮するといわれている。
活性酸素が原因となる病気は、日本人の三大死因であるガン、心臓病、脳血管疾患にとどまらず、糖尿病、動脈硬化、高血圧、肥満、肺気腫、ストレス性潰瘍、リウマチ、パーキンソン病、アルツハイマー型痴呆、認知症、白血病、肝硬変、老化などが挙げられ、ほぼ主要な病気を網羅しているといえよう。
このように水素は、活性酸素を除去できる点と、抗酸化物質として唯一脳細胞にまで到達できる点で、その効果が注目されている。
水素がメラニンを抑制?アンチエイジングに活用
様々な医療現場での活用が期待されている水素だが、特に美容医療・アンチエイジングの分野で調査研究を行っている会社がある。ユニライフジャパンだ。
同社は、固定化した水素に、メラニンを抑制する高い抗酸化力があるということを、県立広島大学名誉教授/大阪物療大学保険医療学部の三羽教授との共同研究チームで突き止めた。
これによると、同社が水素発生原料として使用する「マイクロクラスター」と他美白剤成分を対象に、チロシナーゼ酵素反応検証におけるメラニン中間体の生成度を計測。コウジ酸、アルブチン、ハイドロキノンなどの美白剤と比較してメラニン中間体(DOPAクロム含む)の生成を著しく抑制することが分かった。他の美白剤では最大で36%程度のメラニン中間体を抑制するが、マイクロクラスターは87%程度を抑制し、既存美白剤の2.5倍以上の美白効果になったという。
※この調査結果は国際学術誌「ナノ科学ナノ工学誌」(Journal of Nanoscience and Nanotechnology)に2012年12月に論文掲載されている。
この研究で使用した水素発生原料のマイクロクラスターは、ナノサイズの多孔質を持つシリカ(二酸化ケイ素)に大量の水素を閉じ込めた素材。水を加えることで水素がナノバブルとして継続して発生する。これはアメリカのパドリック・フラナガン博士によって開発された水素発生原料だ。
長寿の村フンザの水に特殊なタイプのシリカ(ケイ素)が含有されていることに着目し、30年以上の年月をかけてこの特殊なシリカを開発した。このシリカに水素を吸着させたものがマイクロクラスターで、酸化還元電位(OPP)-950mV、水素溶存量1.608ppmという特徴を持つ。
さらにこの水素発生原料マイクロクラスターの効果は、メラニンの抑制だけではない。コラーゲン生成に関する研究結果では、マイクロクラスターを1.65mg/ml投与することで通常の2.35倍に増加した。レチノールとの比較では1.3倍の結果になったという。(県立広島大学名誉教授/大阪物療大学保険医療学部三羽教授による研究)
一部の水素商品における信憑性が問われる中で、同社はフラナガン博士提供のエビデンスだけではなく、日本水素医療美容科学会に所属し、県立広島大学名誉教授/大阪物療大学保険医療学部の三羽教授と共にマイクロクラスターの研究を行っている。さらに、クリニックとも提携し医学的分野でも水素の可能性を模索しているという。
アンチエイジングや美容という視点で水素をさらに活用しようと、同社では美白・美肌関連の化粧品やサプリといった商品開発も進んでいるという。またOEMでの商品開発も行っており、クリニックやエステオリジナルの水素関連商品を開発も可能だという。
各社が水素を使ったアイデア商品を!
「ASU MIITE」(アスミーテ)は、エコテックスが取り扱う水素水だ。この水には、特許出願済みのナノレベルの水素水とあわせて制癌作用を持つフコイダンが含まれている。水素は水中に長時間保持できないことが業界での共通課題だったのだが、この「ASU MIITE」(アスミーテ)は7年間の研究の結果、「イオン化ナノバブル製法」を開発。1ccあたり1500万個もの水素を含み飲料後は30分程度で全身を一巡するという。
一方、〝水素市場〝の老舗であるFDR・フレンディアでは、21年前から大学や研究機関・病院と提携し研究を重ね、病気になりにくい身体作りに貢献すべく製品開発・販売を行っている。スティック状の「ドクター・水素水」シリーズは同社のベストセラー商品で、シリーズ販売本数は550万本以上を記録。普通の水にスティックを入れるだけで安定した水素水を作りだることができ、気軽に自宅で水素水を飲用することができる点が好評だ。
水素をとりまく環境
このように医療分野はもちろんアンチエイジング、美容医療分野でも活用できそうな水素関連商品だが、「残念だが、水素が入っているとは言えない商品もないとはいえない」と、専門家は話す。水素は取扱いが難しい原料でもある。先述のとおり分子がとても小さいため、ペットボトルに入れて販売されている水素水の場合は、時間の経過とともに水素が外部に漏れ出てしまっている可能性は否めない。
また水素がどのくらい安定保持できるかを示す「溶存水素濃度」を調べると、ふたを開けた後、数十分で水素が抜け出してしまう商品もある。原料として利用している水素の分子サイズによっては浮力が生じて起きる現象だ。
厚生労働省による明確な取扱基準なども定められていないことも、こうした「疑似商材」が市場に出回る原因ともなっている。正統な開発会社は、独自で大学や研究機関と共同で研究開発を行ってはいるものの、そうした努力には限界もある。
研究者と行政が連携しながらしかるべき規格づくりをして、その共通ルールのもと開発メーカーが製造できる環境が整えば、結果的に消費者が安心して購入できるようになるはずだ。そんな〝水素市場〝になっていくことを本誌では説に望む。