Doctor’s LABOトピックス

保健所が監査に動く

「医療機関ホームページ」で一部美容クリニックに
ガイドライン趣旨の「関連団体の自主性」は骨抜きで
ネット広告規制は強化

美容医療と歯科インプラント治療を行うクリニックを対象に、『医療機関のホームページの内容の適正なあり方に関する指針』、いわゆる「医療機関ホームページガイドライン」が施行され、美容クリニックなどを中心に、それぞれエリア所管の保健所がネット広告の監査に乗り出している。厚労省の一連の検討会では、その基本的な論点である「ホームページの医療広告を規制する行政監視の権益を大幅に認めるか?」「医療側の表現の自由の担保と自主的な取り組みに任せるか?」に対して、後者の意見に歩み寄ったかたちとなっていたが、行政が保健所を介してネット広告内容の修正や指導を強めている感は否めない。昨年、最終案をまとめた同省の検討会(12回「医療情報のあり方等に関する検討会」(以下 検討会)では、同省調整官から「最終案前に美容外科学会2団体と調整した」との発言もあり、運用にあたっては関連団体による自主的な取り組みを促すとしていた。しかし今回の保健所による抜き打ち的な監査には、多くの美容クリニックが戸惑いを隠せない。平成19年4月の改正医療法施行に伴い、20年11月付の医政発第0401040号「医療広告ガイドライン」で示されてきた「医療機関が開設するホームページは当該医療機関の情報を得る目的をもつ者が検索サイトでの検索を行い閲覧するため、広告とはみなさない」とする原則論は守られてるとはいえ、美容医療などの自由診療に照準をあわせたネット広告規制は、さらに強まることが予想される。そしてその背景には、規制強化に導くために検討会を、行政側が「出来レース」にしていたと言わざるを得ない

※本文と写真に関係はありません。

ガイドラインでは「医療機関が開設するホームページは当該医療機関の情報を得る目的をもつ者が検索サイトでの検索を行い閲覧するため、広告とはみなさない」とする原則論は守られた。一方で医療機関並びに医師らの自主的な取り組みを尊重するかたちで関連団体の自主性に委ねられることも盛り込まれている。
そして「国民、患者によって有用な情報源の一つとしてホームページ特有の性格を考慮する」と基本的な考え方をもちつつも、行き過ぎた広告内容(誤認を与え、もしくは詐称の内容)に限って、その規制の範囲を定めたとした。
とりわけ美容および歯科インプラントなど自由診療分野で関心の高かった、施術前後(BeforeAfter)の写真、さらには患者の体験談などへの規制では、「あたかも効果があるように見せる加工・修正(撮影条件、被写体の状態を変える)した術前後の写真」や「当該医療機関に意図的に便宜を与えるような体験談を取捨選択して掲載する」ことを禁じたが、掲載自体への規制強化には至っていない。
本紙も主張してきた「事実としての術前後の写真の掲載など信憑性が高いものまで規制の対象にすることはあってはならない。消費者の保護と権利を主張することと同じように、医療機関とりわけ医師の治療の権利まで奪ってはならない」する業界側の意見は認められたといっていい。
一方厚労省では、ガイドラインの周知徹底をはかり、まずは遵守してもらうとしているが、守られない場合は次の措置を検討していかざるを得ないとしている。「実効性が得られなければ何らかの法的な拘束力をもたせ、適宜ガイドラインの見直しをはかる」ことも示唆したかたちだ。今回のガイドラインでも、仮に虚偽、誇大な内容を掲載することは明らかに国民、患者を不当に誘引なった場合することになるとして、医療法以外の法令で規制、罰則はありうる。
こうした中で、すでに一部の美容クリニックなどを中心に、それぞれエリア所管の保健所がネット広告の監査に乗り出している。行政が保健所を介してネット広告内容の修正や指導を強めている感は否めない。
昨年、最終案をまとめた同省の検討会では、同省調整官から「最終案前に美容外科学会2団体と調整した」との発言もあり、運用にあたっては関連団体による自主的な取り組みを促すとしていたにも関わらず、今回の抜き打ち的な保健所の監査には、美容クリニックにとって戸惑いを隠せない。ネット広告規制に対してはかねてから2団体の間に温度差があったと指摘する関係者もあり、「行政の積極的な介入」には一方の団体からの意見が投影された可能性は高い。
ガイドラインは、すでに本紙既報のとおりガイドライン(案)に沿ったかたちで施行されているが、主な指針では「絶対安全な手術を提供」「○%の満足度」「日本一」などの表示表現について、虚偽であったり客観的なデータや科学的根拠がなければ掲載はできない事項にした。
さらに、当該医療機関や民間団体が運営する活動実態のない団体による資格は掲載を禁じられている。また早急な受診を過度にあおる表現や費用の安さを強調する「○○キャンペーン」などについても不当な誘引にあたるとして掲載すべきでない旨、明記している。指針では最後に、自由診療において利点や長所のみが強調され、治療のリスクや副作用情報が乏しいケースも少なくないため、こうした情報も提供するよう求めている。
またネット規制の対象には、医療機関のホームページのみならず勤務する医師個人のブログなどについてもホームページとリンクで一体的に運営される場合や、広告会社、サイト運営会社などによって客観的ではないスポンサー情報や施設バナー(検索によって施設のホームページにつながる)にも、内容次第では適用される。
いずれにしてもネット広告規制は進みだした。クリニックはもちろんポータルサイトなどにも対象範囲は広がっているため、今後、美容クリニックの集患方法は新たな対策を迫られることは避けられない。
(JAASポータルサイト・DOCTOR’S LABOでは、本紙報道記事を転載しているもので、有料広告掲載として運営しているものではありません)

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