Doctor’s LABOトピックス

植物成分の強調表示をフランス提出、承認の見通し(EUの健康強調表示)

植物成分の強調表示をフランス提出、承認の見通し
EUの健康強調表示

その二
国際栄養食品協会(AIFN)専務理事  末木 一夫

「免疫ビタミン」「免疫ミネラル」など造語は使用できず
オメガ3系DHA、EPAでは合算量5g超えない注意喚起が

難産であったEUの健康強調表示登録が実施され、公表された。欧州議会および欧州理事会の精査期間が終了し、健康強調表示のリスト作成を定めるEU規制No.432/2012が、EU官報でに掲載され、リスト化された承認済健康強調表示には222件(68成分)が収載された。本稿では107号に引き続き、EUの健康強調表示のその後を追う。

EUの健康強調表示の一般健康強調表示について、肯定的な評価が出された222件(68成分)の欧州委員会へのリスト掲載に基づいて、否定的な評価が出された健康強調表示に関する6カ月の猶予期間(既存の各加盟国で実施されている健康強調表示)が昨年の12月14日に終了して、あらたな局面に入っている。
とはいっても国際的に最も興味が高い植物由来成分等に関する保留案件について、その進展はいまだに明確な動きがみられない。
一方で、健康強調表示とは一見無関係と思われるが、フランスから食品に使用できる植物由来成分のポジティブリストが完成して欧州委員会に提出された。先に、ベルギーおよびイタリーが同様のリストを提出して承認されていることから、フランスの場合にも承認される見通しで、この4月から施行されると予想されている。これらの中には現在保留中の成分も含まれていると思われ、一層の健康強調表示評価の促進が求められてくるのではないだろうか。今回は欧州委員会の栄養および健康強調表示に関する作業部会の概要を示す。

保留になっている第13条:一般健康強調表示認可制度の付属文書に関する意見

欧州委員会は、議論のために新しい意見を提案した。カフェインの強調表示は除外されたが、委員会はEFSA(欧州食品安全機関)に安全性を確認するよう依頼する予定で、そのため現在は保留にされている。オメガ-3脂肪酸ドコサヘキサエン酸(DHA)およびイコサペンタエン酸(EPA)に関する健康強調表示の使用条件には、サプリメントあるいは栄養強化食品に使用される場合、EPA量およびDHA量を合算した一日あたりの補給的使用が5gを超過しないように消費者に注意喚起する文章が記載されることになる。

一般的表現に関する意見

食品の栄養および健康強調表示規制(NHCR: Nutrition and Health Claims on Foods Regulation)No.1924/2006の第1条4項を踏まえて、規範からの“逸脱”に関する規則を設定する際に考慮する点についての作業文書に関して、欧州委員会は、まだ規則に関する意見がまとまっていないため、現在は一般的表現の申請を受け付けていないと述べた。しかし、委員会は早急に規則の合意を図りたいと切望している。
まず、一般的表現とは何かを、いかに理解するかという議論が行われた。NHCRの第1条3項によると、一般的表現は健康への作用を含むことがあり、そのため一般的表現が含意する可能性のある健康効果が全く得られないことを、消費者が理解していることが重要であると合意した。しかし、一般的表現の目的は誤解を生む強調表示の使用を許可することではないため、現在消費者が一般的表現をどのように理解しているか、また消費者は商品を摂取することで健康効果が得られるとは期待していないという証拠を提出することが重要になってくる。加盟国は、それぞれ自国での一般的な消費者の理解度を見極めなければならない。
これまで一般的表現は全加盟国では使われていなかった可能性もあるため、それぞれの国で異なった受け止められ方をすると思われる。そのため、逸脱は全ての加盟国に適用されるのか、それとも一般的表現がこれまで使われていた国のみに適用されるのか、疑問視された。NHCRはEU域内調和規制でありEU域内調和市場を促進する目的があるため、逸脱は全加盟国に適用すべきとされる可能性がある。一方で、これまで一般的表現を使用してこなかった加盟国においては、これまで使っていた単語を用いるなどして、消費者に誤解を与えないようにすることが必要である。
一般的表現が広く使われている国では、食品事業者は、申請のために協力する必要があり、加盟国も協力し、健康強調表示の追加評価に使用された手順が有益なモデルになるかと思われる。これについて委員会は、NHCRは食品事業者が申請を出さなくてはならないと規定しているが、業界団体も申請者の代わりに委員会と意思伝達する代理人として関わることができると述べた。

暗示的健康強調表示

食品ラベルに使用される絵柄あるいは図形記号(ルテインを配合するサプリメントに目の絵柄を表示する等)は、健康強調表示第10条3項に当てはまるのか、また当てはまる場合には、第13条あるいは14条の健康強調表示リストに記載されている承認済みの健康強調表示を伴う必要があるのか、という議論が行われた。これが正しい解釈だということで、全体の合意に至った。また、こうした絵柄やシンボルは、消費者に著しい不安を生じさせるものであってはならないという注意もあった(No.1924/2006 第3条e項)

免疫機能に関与する栄養素(immunonutrients)

「免疫機能に関与する栄養素(ビタミンA、ビタミンC、鉄および亜鉛)は、免疫系の正しい機能に寄与する重要なミネラルおよびビタミンである」といった成分の一般表示表現に使われるものとは別に、「免疫ビタミン」および「免疫ミネラル」というような〝便乗文言〝の使用に関する議論が行われた。
作業部会は、こうした文言は適切な言葉ではなく、認可済みの健康強調表示と関連づけられていないため、わかりづらいという意見であった。こうした造語は、関連する承認済みと併用した場合に用いることのできる、非特異的な健康強調表示を暗示すると感じる委員もいた。

フランス提出の植物由来成分ポジティブリスト

6年間の議論を経て、フランス食品法の下でどのように植物由来成分を使用できるかを設定した法令が、欧州委員会に承認を求めて通知された。この法令には、サプリメントへの使用が認可されている植物(キノコ類以外)のポジティブリストおよびその使用条件(最大値および警告文書等)が掲載されている。サプリメントが医薬品と分類されてしまうような植物由来成分の使用は禁止している(例:活性成分の量は治療用の投与量より多くなってはならない)。通知プロセスについても掲載されており、相互理解についても認識している。ポジティブリストに非掲載の植物や、掲載されている使用条件とは異なる条件で用いる場合は、市場前承認を申請することもできる。
文書内に掲載されている植物由来成分を配合したサプリメントを取り扱う全企業は、品質関係書類を当局に提出できるよう準備しておかなくてはならない。
・植物/植物由来成分あるいは植物由来成分製剤の特性
・製造工程、バッチサイズ、保管条件
・植物由来成分製剤の規格統一のためのマーカー等の規格書
・安定性データ
・市販後調査
・暴露量に関する情報
・毒性学的データ

(つづく)

↑ページの先頭へ戻る