Doctor’s LABOトピックス

10年の時を経て 再び「美容炭酸効果」が脚光

床ずれの臨床現場で立証、血行不良を改善

ドイツでは炭酸ガス療法が保険治療適用(心筋梗塞、動脈硬化)

皮膚のターンオーバー促進、くすみや乾燥肌に改善効果
美容アンチエイジング医療やエステサロンに普及進む

市場には炭酸製品、設備機器数多く、注目は「B-da」

ここ最近、炭酸泉、炭酸水、炭酸洗顔、炭酸パックなど「炭酸」を活用した美容アンチエイジング医療・美容関連商品が注目されている。スーパー銭湯や温泉施設でも炭酸風呂が設置されていたり、サッカーや水泳などのスポーツ分野でも疲労回復を促進するため炭酸浴を積極活用しているという事例もある。炭酸自体は約10年ほど前から存在していたが、いま再び炭酸効果が脚光を浴び始めてきた。こうした中、美容・アンチエイジング熱の高まりや高齢化社会の進行、健康志向の高まりなどを受け、美容医療の現場でも今後さらに活用される可能性が大きい。本稿では炭酸商品と市場性を追った。

日本における炭酸の使用例としては、床ずれ(褥創)の患者の治療として一部の医師の間で使われていた。床ずれ(褥創)が身体を同一の姿勢で長時間維持するために起こる血行不良が原因であるため、炭酸ガスを使い血行をよくすることで改善に向かう。こうした治療が複数の医師の間で行われ、実際に論文にも発表されている。(日吉俊紀;人工炭酸泉浴剤による褥創治療について.1989)その他、炭酸水や炭酸ガスを活用したリウマチなどの創傷治療などとしても医療現場で活用されている。ドイツの一部地方で炭酸ガスが心筋梗塞や動脈硬化の治療として100年以上から保険治療として取り扱われているほどだ。
炭酸の効果として最も有名なのは血行促進である。炭酸水に含まれる二酸化炭素は人間の細胞にとっては不要な老廃物であり、この老廃物(二酸化炭素)が炭酸として皮膚に吸収されると、逆に身体はこれを排出しようとして毛細血管を広げて血流をよくする。血流がよくなっても、炭酸の効果で血管自体が広がっているので血圧が高くなることはないのも特長だ。二酸化炭素が増えることで血液内の酸素と二酸化炭素の入れ替えを担うヘモグロビンが活発に動き、酸素量が増えて細胞が活性化される。これによって肌のターンオーバーを促進し、くすみや乾燥などの肌トラブルの解消効果も期待される。
炭酸の「内面的な効果」としては上述のような細胞の活性化であり、もう一点、「外面的な効果」として、炭酸の持つ弱酸性のアストリンゼント作用も見逃せない。これは肌の引き締める収斂作用のことで、肌や髪の毛をすべすべにし、臭いのもととなる雑菌の繁殖を抑制する効果がある。頭皮や毛穴の皮脂汚れ、加齢臭、ペットの臭いなどにも効果的だと言われている。なお炭酸とは目に見える「泡」のことではない。より細かい分子を指し、これらは毛穴からではなく皮膚から毛細血管に入りこむ。
また、体内のNK細胞を強化し抗原提示能力を正常化させることによる免疫力の強化、血管を広げることで血流がよくなり、疲労回復効果や不眠症の改善につながったり、血管拡張効果により高血圧や糖尿病の改善に使われることもあるという。
さて市場に流通する炭酸関連商品、設備は多い。しかし本紙が最も注目したのは、フジデノロが企画からデザイン・開発を手掛ける炭酸泉生成装置「B-da」である。
ちなみに炭酸泉生成装置には、大きく2種類がある。「循環式」と「かけ流し方式」(ワンパス)だ。世に出ている多くの商品は「循環式」というタイプで、バスタブ内に湯を貯めた後、電気でポンプを動かしお湯を吸い上げ炭酸泉にしてバスタブに戻す装置だ。感電しないよう電源装置を固定する設置工事が必要で、またお湯を循環させ炭酸濃度を上げるため一定の濃度にするには時間がかかる。もう一つの「かけ流し方式」(ワンパス)はホースをひねると高濃度炭酸泉が生成される装置である。これは湯船でもシャワーでも使える。事前に貯める必要がないので、使いたいときに使いたいだけ使えるという利点を今回着目した「B-da」は兼ね備えている。
「B-da」を開発したフジデノロは、精密加工・樹脂素材の研究開発を行う「モノ作り」のメーカーだ。半導体装置、航空機、電子機器分野において機能製品を製造する他、医療・健康機器に関わる装置の製造なども手掛けている。特に、乳がんなどの高度ながん治療に欠かせない放射線照射装置や幹部の形状を安定させる器具などの開発を通し、「自社のノウハウを活用して病気の人のストレスを軽減できないか?」という点について同社・ヒューマンヘルス事業部は考える。そこで開発チームが注目したのが、この「炭酸泉」を使った炭酸泉生成装置だった。炭酸の活用を構想して5年、炭酸泉生成装置「B-da」開発に2年が経っている。

製造メーカーだからできるコスト減に成功

従来の「循環式」だと、電源やガス管などの設置工事が必要で導入コストも40万円以上になる。決して「手軽」には導入しにくかった今までの炭酸泉生成装置の価格を下げるべく「B-da」は設置工事を不要とし価格を10万円前後に抑えて販売した。また「B-da」は、用途にあわせて炭酸泉の生成方法も2種類用意している。「ボトル炭酸」法と「炭酸タブレット」法だ。一般的なボトル炭酸(炭酸ガスボンベ)による炭酸生成においては、樹脂メーカーならではのノウハウであるプラグフロウという技術を活用。たっぷりと炭酸泉を使いたい際に適している。チューブが従来の製品よりも細く3㎜程度のため、賃貸マンションなど設置工事が難しい住まいでも難なく使用することができるのが特長だ。
さらに、手軽にシャワー等で利用できるようにと、炭酸タブレットでの利用をも可能とした。この技術は「デノロ・スパークリング・ツインコア」という炭酸を高濃度に溶解する、同社ならではの特許技術だ。技術陣のノウハウを活かすことで、電気を使わずに高濃度の炭酸泉を自宅で楽しめるようになった。ボトル炭酸とタブレットの2種類の方法で炭酸泉を生成できるのは現状「B-da」だけだという。装置の設置方法もいたって簡単。自宅の風呂のシャワーヘッドを外せば素人でも接続が可能。専用の吸盤を使いフレームと本体をひっかけるだけで固定することができるため一人暮らしの女性でも設置はスムーズにいく。因みに交換用のガスボンベは、従来の商品がガス会社にボンべを注文する方式に対して「B-da」は自社サイト経由で購入することができることも魅力のひとつといえよう。

「浸かる炭酸泉」から「使う炭酸泉」へ

「循環式」と異なり「かけ流し方式」の「B-da」は、その特性を活かして様々な使い方ができることもうれしい。シャワーヘッドから吐水はもちろん、炭酸バス入浴、炭酸洗顔、炭酸足浴などでの使用が可能だ。またその応用方法として、炭酸蒸しタオルを顔に乗せターンオーバーの活性化を促進したり、タオルを肩に乗せ血流を促し肩こり改善に使ったり、髪の毛を蒸しタオルで巻き紫外線などのダメージや乾燥によるパサつきやキレ毛・枝毛予防に使うなどユーザーによる、炭酸泉の活用範囲は広がっているという。
特許技術を活用した「デノロ・スパークリング・ツインコア」を使った炭酸タブレットには、女性の心を掴むもうひとつの秘密がある。炭酸を高濃度で溶解しただけではなく、タブレットに肌にうるおいを与えるヒアルロン酸やコラーゲンを配合したり、ローズに香りをつけるなど、女性が風呂あがりの最後にシャワーで使いたくなる工夫もされている。今後香りや効能の異なるタブレットを更に投入しラインナップを増やしていく。
同社では、メインターゲットを40代前後の女性とし、肌のキメを整えたりくすみなどの改善といったアンチエイジング対策としての活用を想定しているものの、家族全員で楽しめるような炭酸泉をめざす。
「ご家庭で奥さんが本器の購入を希望したとしても、炭酸泉の活用方法は幅広い。たとえばご主人は加齢臭軽減として、子供はニキビ改善のため、高齢者は血行促進、そしてペットの臭い消しにも使えるなど、家族全員が楽しめる機械になる」というわけだ。
また一般向けだけではなく、すでに同社では高級ホテルや人工透析クリニック(体温低下に炭酸泉で回復させる)、美容室・エステサロンなどで導入実績があり、今後はコンシューマー用ではなく業者向けの設備にも一層力を入れるという。

ノーベル賞受賞の「フラーレン」も使用した炭酸パック

その他、ワムが手掛ける炭酸パック「スパークル1,000PLUS」は、医療で活用されていた炭酸療法を参考にして作られたスキンケアパックだ。パック前に2つの原料を混ぜて使用するこの本格的な炭酸パックは、主にエステサロンなどに向けて発売している。炭酸の持つ血行促進、新陳代謝の活性化をあわせて、本商品ではビタミンCの172倍の抗酸化力を持つ「フラーレン」を配合している。「フラーレン」は、その発見者が1996年にノーベル化学賞を受賞した美容成分だ。
また低刺激となるように開発しているため、炭酸によるピリピリ感も通常の商品よりも少なく肌の弱い人でも比較的使いやすい商品にしている。エステサロンからの引き合いも増えているという。
エステサロン向けのに炭酸系機器の企画開発販売を行うのは、ルーヴルドージャパンだ。その名も「炭酸アトマイザーウッド」。エステサロンに設置しても美しく見えるように飛騨の家具職が使っている木材を使用している。この炭酸アトマイザーウッドの中に炭酸ボンベを入れ、この炭酸を美容液に溶け込ませて吹きかけるだけ。高濃度炭酸なのでわずか数秒で、炭酸浴や炭酸パックと同じ血流促進効果が期待できる。フェイシャルエステ以外にも、頭皮やバスト、ボディ、ハンド、フットなどあらゆるところで使用が可能だ。さらに同社では、昨今の炭酸ブームを受け、自宅でも炭酸を体験できるスプレータイプのローション「ECローション」も発売している。体内の酵素を活性化して細胞を若返らせるENMと、コラーゲン、ヒアルロン酸などの保湿成分、そして抗菌や鎮静作用が期待できる銀が配合されており、リピート購入する顧客が増えているそうだ。

炭酸の有用性はさらに広がるか?

炭酸ジェルパック市場を巡っては、昨年から製造販売をめぐって、化粧品販売会社・製造会社らの法的紛争が起きている。炭酸ジェルパックの製造委託を受けていた会社が、委託販売していた会社との基本契約を解除し、独自で商品開発を行ったからだ。しかもこの会社は現在炭酸ジェルパック市場ではトップクラスのシェアになっているため、一般市場においても影響が出る可能性が大きい。
しかし業界でのこうした商取引上の争いは尻目に、炭酸市場の普及拡大は進む。望むべくは、とりわけ美容医療アンチエイジング分野でのエビデンスの蓄積だろう。それさえ担保できれば、顧客満足度はさらに高まるはずだ。

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