Doctor’s LABOトピックス

統合医療の推進に本腰

厚労省 第5回「統合医療のあり方に関する検討会」で
「病気予防、健康増進で役割無視できず」

先ごろ、厚労省省内プロジェクト「統合医療のあり方に関する検討会」(独立行政法人 国立長寿医療研究センター・大島 伸一総長ほか構成員9名)の第5回会合が開催され、多岐にわたる統合医療の療法について安全性、有効性に関する科学的知見を本格的に収集していくことを合意した。
またこのエビデンスをもとに患者、国民さらには医師に対して広く情報を発信することで、統合医療を適切に選択できることが重要として、公的機関と連携しながらネット活用によって情報を提供する仕組みづくりに取り組む。 ともすると「統合医療」に対しては標準医療側からは白眼視されるケースが少なくない。しかし、同検討会によって政府、行政主導で今後、より前向きな議論と取組みがされていくことは大いに評価される。 平成22年、当時の鳩山内閣が健康寿命を延ばす観点から「統合医療」の推進を言明。厚労省内にプロジェクトチームを立ち上げ、過去4回の検討会を開き、先ごろの5回目の合意に至った。議事進行のなかで、これまでの論点を整理するかたちで、統合医療の現状について報告がされた。その中で「がん、アレルギー疾患、精神疾患など食生活やストレスなど複合要因で起こりうる疾患では近代西洋医学だけでなく、漢方、サプリメントや各種の民間療法が広く患者、国民に利用されている」として、委員からはこうした新たな医療を無視できないとする意見が出された。 そしてこの療法を西洋医学と対立的に捉えるよりむしろ、組み合わせることが、より大きな効果をもたらすとして、新しい医療の概念「統合医療」の重要性を改めて指摘した。さらに、統合医療の最大の特長が、個人の自然治癒力を促進することで治療のみならず、病気の予防や健康増進に寄与すると述べた。 報告では諸外国の「統合医療」の定義や現状にも言及し、米国、中国、インド、韓国そして世界保健機関WHOについて詳細な解説が加えられた。とりわけ参考となる米国の取り組みについて、米国衛生研究所相補代替医療センター(NCCAM:National Center for Complementary and Alternative Medicine)を紹介し、生薬、ビタミン類、無機物(Natural products)などの投与や、瞑想、ヨガ、鍼灸、太極拳などの心身療法(Mind and body medicine)、さらにカイロプラクティック、マッサージなどの手技としての施術行為(Manipulative and body-based practices)などを、相補・代替医療の分類として挙げていることが報告された。 検討会では、「代替医療は、必ずしも医師などの医療従事者により提供されるだけでなく医師以外の者により提供される場合がある」とするWHOの見解も紹介されたが、代替医療はあくまで医師主導で行うべきとする意見が大勢を占めた。 一方厚労省では「統合医療の情報発信等のあり方に関する調査研究」(以下 調査研究)での2008年からの4年間のコクランライブラリー報告を踏まえ、主な療法の数と有効性についてその分析が多くの療法で「未確定」であったことを確認。「統合医療」の中には科学的知見が十分なものがある一方で、全く根拠のないものまで混在すると指摘された。 こうしたことから、具体的な今後の取り組みとして国内外の統合医療に関する療法の学術論文を収集する体制をさらに整備していくや、その拠点に医師をはじめ多職種の関係者が関わり、臨床研究を支援していくことを申し合わせた。その際、収集する知見についてはランダム化比較試験(RCT)のように、より高いエビデンスが望ましいとした。 「統合医療」を推進する上で忘れてはならいのが、その利用状況であることはいうまでもない。検討会では先述の調査研究から明らかになった相補・代替療法の実態調査(3178人)を示し、「サプリメント」が33.8%と最も利用されているとした。回答では13%の「マッサージ」、10%の「整体」とつづく。 調査では、統合医療に抱く国民のイメージについても実施されている(3107人)。それによると、理解されている療法では「マッサージ」(40.5%)、「漢方」(34.2%)、「サプリメント」(31.4%)とつづき、理解していないとするものは「ホメオパシー」「温熱療法」をあげる回答者が多い。調査研究で行った別の調査「統合医療を利用する際の参考情報」の中で、医師に相談した人ほど「温熱療法」を利用した人が多く(32.4%)、医師からの紹介、推薦でも「温熱療法」が最も多い(27%)という皮肉な結果も出ている。 いずれにしても、統合医療が公正なかたちで啓蒙され、エビデンスをもとに患者、国民さらには医師に対して広く情報を発信することで、統合医療を適切に選択できることが望ましい。 ■本稿で記事掲載のベースとなった「統合医療のあり方に関する検討会」資料に関心のある読者は、本紙編集部03‐6222‐3121までお問い合わせ下さい。 調査報告については、次号「JHMマーケットデータを読む」で詳しく紹介します。

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