美容アンチエイジング業界コラム

ぜいたく税導入で韓国美容整形業界に試練訪れる

14年3月、例外なく全施術に10%課税
かさむイニシャルコストなどダブルパンチ

圧倒的安さで海外患者誘致など需要獲得
英経済誌の統計でも
人口比受診率は世界No1(13.5人)

いまや日本を超える勢いで「美容整形」の需要を、国内外から取り込む韓国では、業界への保護政策によって、その治療収入に対しては概ね課税対象から免れてきた。いわゆる「ぜいたく税」とも言われる付加価値税だ。しかし先ごろ政府・企画財務省は、税制改正案を発表し、来年2014年3月から、すべての「美容医療」に対して10%の課税を課すことになりそうだ。ソウル市内に乱立する美容クリニックには、このニュースが報じられた直後から、駆け込みの治療を受けにくる患者は後を絶たない。クリニックもこの「特需」を当て込んで休日返上で、診療にあたるところが少なくない。一方で、来年3月以降の患者の目減りを心配するクリニックも多く、以前にも増して、中国やアジアなどへの「美容手術の出稼ぎ」を余儀なくされる医師が出てくることも予想される。

「日本の美容整形医以上に、韓国の医師たちは節税意識が高い。その背景には日本のように消費税が一律課税されず、ぜいたく税の対象といわれる美容整形に付加価値税の課税を免れてきたからだ」
こう話すのは、韓国の美容整形事情に詳しい専門家で、付加価値税がない分、治療収入のうちからいかに所得税などの税額負担を節税するかがもっぱら医師たちの「財テク」に関わる関心事だという。
しかし、もはやこうした「特権」はなくなり、2011年7月から課税対象とされてきた「二重手術」「「鼻形成」「豊胸」「脂肪吸引」「皺除去」に加えて、2014年3月からは、健康保険の対象外治療(自費診療)としての美容目的のすべての整形治療、顎顔面矯正、美容目的での皮膚治療など課税対象に例外は設けない。
政府発表のニュースが報じられた直後から、駆け込みの治療を受けにくる患者は後を絶たない。クリニックもこの「特需」を当て込んで休日返上で、診療にあたるところが少なくない。一方で、来年3月以降の患者の目減りを心配するクリニックも多い。
日本に比べ、圧倒的に安い治療費そして「ぜいたく税」の課税を回避してきた韓国の美容クリニックでは、とりわけ中国など海外からの患者誘致でその経営を潤わせてきた。美容医療のツーリズムである。しかしすでに中国から「客足」に一部で陰りが出始めているという。 
勢い、中国やアジアなどへの「美容手術の出稼ぎ」を余儀なくされる医師が出てくることは明らかだ。
韓国の美容クリニックはソウル市内だけでも5000軒あまりが林立しており、今でも開業ラッシュはおさまらない。自ずと競合はさらに激しさを増し、「集患」にかけるネット広告などの宣伝費は、日本と変わらない。またソウルなど都市圏ともなれば、その不動産物件にかかる維持費は莫大なものになる。
ソウル市内美容形成のメッカともいわれる江南区に開業するクリニックともなれば、月に何千万ウオン(数百万円)の宣伝費が出て行く。宣伝費に1億ウオン(約1000万円)以上をかけるクニックさえめずらしくない。
こうしたクリニック経営のためのイニシャルコスト(必要経費)は人件費も含め、年々上昇していくにも関わらず、今回の付加価値税導入が追い討ちをかける。一方で「安さ」が売りの治療費を上げれば、「患者」は奪われるというジレンマに陥っているのが、韓国の美容整形の現状だ。
ちなみに、イギリス経済週刊誌から先ごろ発表された世界の美容整形手術の統計値によれば、韓国(韓国国内および海外患者)は人口1000人あたり13.5人の割合で治療を受けているとして、世界No1の受診率を記録している。
その部位別の需要は、「眼瞼」「鼻」「唇」が上位3傑を占め、4位から「顎」「胸」「背」「傷跡」「エクボ」「脂肪吸引」「皺」と続く。
参考までに、治療費の相場価格を示してみる。
 二重瞼(切開)11~14万円、同埋没法9~11万円、下眼瞼脱脂9~11万円、鼻尖形成14~16万円、隆鼻11~14万円、鷲鼻矯正18~27万円、口唇ヒアルロン酸注入7~14万円、豊胸46~55万円、バストアップ36万円、陥没乳頭治療9~14万円、脂肪吸引27~45万円、へそ整形14万円、大腿部脂肪吸引32~45万円、ふくらはぎ痩身23~27万円、両顎修正120~136万円と日本に比べ治療費は安い。

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