美容アンチエイジング業界コラム

まるで「悪者」扱い

消費者庁
美容医療は危険!と、リスク、トラブルを強調

「医療機関ホームページ」広告規制と足並み揃え、
悪評をことさら扇動!?

消費者庁消費者安全課は、先ごろ同省ホームページの「美容医療サービスを受けるに当たっての確認ポイント」と題するニュースリリースを公開した。冒頭『美容医療サービスの施術には少なからず身体的な危険性を伴う』と警鐘を鳴らしながら、過去3年間で相談件数が5016件に達し〝生命・身体に影響がある危害関連の相談事例〝が増加していると強調。その上でホームページや広告の情報をうのみにしない、受けたい施術の情報をもう一度確認する、リスクや施術効果をきちんと説明してもらうなど、警告する。そして「その施術が本当に必要か?」慎重に判断すべきとして、ともすれば美容医療そのものを否定しかねない論調を加える。行政が業界の悪評をことさらに、扇動しているかのようなこうした公開文書に、眉をひそめる業界関係者は少なくない。「まるで悪者扱いとしかいいようがない」と憤慨する医師もいるほどで、厚労省による最近の「医療機関ホームページ」の広告規制の強化とあわせ、行政の過度な市場介入に、今後業界から是正を求める声が高まることも予想される。


前号109号で報じたとおり、美容医療と歯科インプラント治療を行うクリニックを対象に、『医療機関のホームページの内容の適正なあり方に関する指針』、いわゆる「医療機関ホームページガイドライン」が施行され、美容クリニックなどを中心に、それぞれエリア所管の保健所がネット広告の監査に乗り出している。
厚労省の一連の検討会では、その基本的な論点である「ホームページの医療広告を規制する行政監視の権益を大幅に認めるか?」「医療側の表現の自由の担保と自主的な取り組みに任せるか?」に対して、後者の意見に歩み寄ったかたちとなっていたが、行政が保健所を介してネット広告内容の修正や指導を強めている感は否めない。保健所による抜き打ち的な監査には、多くの美容クリニックが戸惑いを隠せない。医政発第0401040号「医療広告ガイドライン」で示された「医療機関が開設するホームページは広告とはみなさない」とする原則論は守られたとはいえ、美容医療などの自由診療に照準をあわせたネット広告規制は、さらに強まることが予想される。
施術前後(BeforeAfter)の写真、さらには患者の体験談などへの規制では、「あたかも効果があるように見せる加工・修正(撮影条件、被写体の状態を変える)した術前後の写真」や「当該医療機関に意図的に便宜を与えるような体験談を取捨選択して掲載する」ことを禁じたが、掲載自体への規制強化には至っていない。本紙も主張してきた「事実としての術前後の写真の掲載など信憑性が高いものまで規制の対象にすることはあってはならない」とする業界側の意見は認められたといっていい。
しかし!である。
今回の消費者庁のリリースでは『美容医療サービスの施術には少なからず身体的な危険性を伴う』と警鐘を鳴らし、過去3年間で相談件数が5016件に達するか中〝生命・身体に影響がある危害関連の相談事例〝が増加していると強調。その上でホームページや広告の情報をうのみにしない、などと、警告をする。
極め付きはリリース7頁目の『厚労省のガイドラインはあるものの、不適切な表現や広告が多くみられ、医療機関のホームページに掲載されている内容は良いことしか書かれていない』とする注意文だ。すべての美容医療クリニックがそうであるかのような、決めつけも甚だしい。
さらに「その施術が本当に必要か?」慎重に判断すべきとして、ともすれば美容医療そのものを否定しかねない論調を加える。行政が業界の悪評をことさらに扇動している、ととられてもおかしくない。
厚労省による「医療機関ホームページ」広告規制の強化と足並み揃え、美容医療を悪者扱いしていると言わざるを得ない。
一方でリリースで示されているように相談のうちトラブルに関する件数の割合は平成19年度から右肩上がりに伸び、24年度には20.3%と5人に一人が何らかのトラブルを抱えている。その年齢、性別では20代後半~30代前半の女性が圧倒する。美容医療で最大の需要層であることも背景にはある。
また消費者庁が指摘するように、強引な即日施術を強要したり、掲示価格とは別に追加オプションを次々と請求するいわゆるトッピング治療を勧める医療機関もなくはない。業界では、こうした悪質な美容クリニックは以前から問題視されており、受診者も治療費の安さに魅かれてついつい、こうした所で施術を行うケースが少なくないという。最大の需要層の女性たちが〝この罠〝にかかる危険性は充分あるはずだ。ある意味、これがトラブル事例を押し上げている可能性も高い。
警告するリリースでは、危害トラブルとしてレーザー脱毛による色素沈着、リフトアップ後の顔面神経麻痺、豊胸オペによる化膿、二重手術後の角膜障害そしてヒアルロン酸注入によるネクローシスなど、写真を使い症例を示してもいる。
修正治療のスペシャリストでもあるJAAS理事長の山本医師は「ほとんどが初歩的な手術のミス。リスクや施術効果の説明そして治療計画書に基づく患者さんとの同意書は当たり前のことです。安易に施術をしてしまうことが、医療事故のもとになる」と指摘する。
JAASライブ講習会の模様と、修正症例を治療するドキュメントでTBSが何度か「Nスタ」で放映した収録映像でも、同医師は、危害トラブルに巻き込まれないためにはクリニック・医師の症例をできるだけ確認することが重要だとも述べてきている。
いずれにしても問題なのは美容医療へのすそ野の広がりと共に、供給側の医師の数も年々増え、医師間に技術の格差が生じてきたことが、このようなトラブル症例を生んでいるといえるだろう。
根本的な解決法は、何も美容医療を悪者扱いにすることではない。美容医療の技術と質をボトムアップすることで、そのためにJAASの役割がある。

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