Doctor’s LABOトピックス

EUの健康強調表示が公表される

国際栄養食品協会(AIFN)専務理事 末木 一夫

難産の末、強調表示222件(68成分)承認

一方で「保留扱い」の植物成分など400件が却下、
12月14日以降市場から姿消す

評価厳しいEUで、踏み込んだ表示許可!
メラトニンと睡眠時間の短縮、ビタミン・ミネラルと免疫機能の正常化など

難産であったEUの健康強調表示登録が実施され、公表された。欧州議会および欧州理事会の精査期間が終了し、健康強調表示のリスト作成を定めるEU規制No.432/2012が、EU官報でに掲載され、リスト化された承認済健康強調表示には222件(68成分)が収載された。詳細はこちら

EUが許可した機能性成分および健康強調表示リスト

リストには承認済健康強調表示が222件(68成分)掲載されている。このリストは、欧州委員会のウェブサイトの相互登録に掲載されており、却下された全ての健康強調表示も記載されている。また、欧州委員会がさらなる検討のために「保留」とした健康強調表示は、ウェブサイトから閲覧できる。
収載されたリストには、プロバイオティクス成分を中心に評価継続中の成分が、91件あり、2012年7月中には結論を出すと説明をしているがまだ、報告されていない。今回のリストは、ビタミン・ミネラルが大部分であり、その他の成分としては、DHA、メラトニン、オリーブ油ポリフェノール、大麦食物繊維。ベタイン、キトサン、α-リノレン酸、β-グルカン、大麦・オーツ由来β-グルカン、コリン、クレアチン、紅麹エキス等がある。一覧表の抜粋を示す
一方、保留となった植物由来成分およびビタミン、ミネラルを除く機能性成分は90%以上が却下された。そのなかには、抗酸化素材が170成分、プロバイオティクス素材が250成分以上含まれており、業界として今後の大きな課題となった。
今後の流れとして食品製造業者には、却下された健康強調表示を現在商品ラベル等に表示されている機能性表示を削除するため6ヶ月間の猶予期間が与えられている。したがって、2012年12月14日から、全ての認可されていない健康強調表示および保留/未検討(2233件うち、2078件が植物由来成分)の健康強調表示を商品ラベル等に表示することが禁止される。すなわち、現在市場にある健康強調表示の内、約400件が市場から消えることになる。

技術的ガイダンス

また、新規EFSA (European Food Safety authority:欧州食品安全機関)健康強調表示ガイダンスが発表された。その内容は、骨、関節、肌および口腔の健康に関する健康強調表示の科学的要件に関するガイダンス文書である。詳細については、機会があればご紹介をするが、本文書は、骨の健康、関節の健康、歯および歯茎、コラーゲン生成等の結合組織、肌の機能、脱水症からの肌の保護、酸化損傷に関する健康強調表示を実現化するための提言に重点をおいている。

植物由来成分

さらに、保留となっている成分中で植物由来成分の今後につき、EC指令No.2002/46(サプリメント指令)は、サプリメントに植物由来成分を配合することを認めているが、実際のところ企業は自社製品を市場に出す際、増加し続ける難題に直面している。主な原因を下記に示す。

・加盟国それぞれが、植物由来成分の使用を規制する多様な取り組みをおこなっていること。
・欧州域内で内容の異なる「ポジティブ」および/あるいは「ネガティブ」リストが存在すること。
・欧州域内での異なる製造基準
・植物由来成分および植物抽出物を食品あるいは医薬品に区分する際に影響する、2つの法的フレームワークが存在していること。
・栄養および健康強調表示規制の施行において、植物由来成分に関する健康強調表示の評価が現在も「保留」されていること。
この問題解決に向けて、EUの2業界団体(EBF<European Botanical Forum:欧州植物フォーラム>およびEHPM<European Federation of Associations of Health Product Manufacturers:欧州健康製品製造業者連合>)に加盟する多くの企業は、植物由来成分について同じ関心を共有している。この2つの協会は市場を安定して成長させ、同時に高いレベルでの消費者保護を保証することを目標とするという共通の展望を発展させ、協力関係を強化することに合意した。またこの協力関係は、植物由来成分の品質、安全性、健康効果、区分問題について、一貫した取り組みや状況に応じた解決策を提供できる食品法の下の法的フレームワークの構築に基づくものとするとしており、作業が進行している。
欧州委員会は8月初旬に加盟国を通して、「食品に配合する植物由来成分の健康強調表示に関する討議文書」を関係者に回覧した。
この文書では、植物由来成分が既存の制度に基づいてどのように販売されているかに応じて、植物由来成分を伝統的植物性医薬品として、あるいは、食品/サプリメントとして販売することができると説明している。
さらに、こうした製品の区分や、消費者に対する製品説明の提供に関する問題の概要を示している。
この討議書では、加盟国に検討してもらうよう、2点の選択肢が提示されている。関係者らは、欧州委員会での議論に向けて、加盟国の当局に意見を提出するよう要請されている。

●選択肢の概要につき、下記に紹介する。
*選択肢1.
現在「保留中」になっている植物由来成分配合の健康強調表示の大部分が否定的な意見を受けることになる可能性が高く、その結果最終的にはEU登録の未認可健康強調表示に加えられることになる。
*選択肢2.
植物由来成分の事例の特性を認識して、法規制の再評価によってその事例の解決に取り組む。この選択肢は、リスク管理者の観点からは、正当化することが難しい“伝統的な使用”に基づく証拠によって得られた考察に関する食品と医薬品の法制度的枠組みの下で、植物由来成分に関する異なる対応の考慮から開始することにある。
すなわち、食品に使用されているその他の成分群に対して、植物由来成分の特異性を認識することにある。そして、健康強調表示を実証化するに十分な“伝統的な使用”に基づく証拠による認識を消費者に伝えるために食品に使用されている植物由来成分に与えられる健康強調表示に適用する既存の法規制の枠組みを変える機会を調査・検討することにある。
この概念によって、健康強調表示の形式で関連する情報提供を消費者に提供する
植物由来成分の有効性に関する証拠より他の課題に拡大する食品における植物由来成分の使用により、広範囲で包括的な考えをリスク管理者が始める可能性にもなるだろう。
このことは、例えばその他の成分と同様に品質と安全性に関する考察も含むことは明らかである。もし、この広範囲で包括的な考えが追求されたならば、考慮するひとつの要素は、食品に使用できる植物由来成分に関する加盟国の取り組みにおける現状の温度差がEU内市場における植物由来成分を配合する食品の自由な流通に障害をもたらしている状況が明確になる。
その結果として、EUにおけるバランスのとれた補完性のある制度の調和を正当化する前段階となる。一方、このような状況下で、EFSAは方法に変更を加えず(現体制維持)、植物由来成分の健康強調表示の評価を再開するよう求められている。

日本の機能性表示拡大への一歩として

一般的には、非常に厳しい結果と評価されているEUの健康強調表示の結果であるが、よく見るとこんな肯定的事例があるといった内容も含まれている。すなわち、「メラトニン」の“時差ぼけ症状の緩和“、“睡眠導入時間の短縮”。「オリーブ油ポリフェノール」の“酸化ストレスからの血中脂質保護”。「β-グルカン」の“血中コレステロール値の正常化”。「葉酸」「銅」「鉄」「セレン」「ビタミンA」「ビタミンB12」「ビタミンB6」「ビタミンC」「ビタミンD」および「亜鉛」の計10種類のビタミンおよびミネラルに“免疫機能の正常化”が認められているといった、我が国の保健機能食品では認められていない成分あるいは機能性表示が、EFSAの肯定的な結果を得ている。上記したようにEFSAは、各機能に関する評価ガイダンスを公表している。
日本においては、ご承知のように昨年度実施された消費者庁の食品機能性表示モデル事業のフォローアップおよび/あるいは、消費者委員会による1万人を対象にした“消費者の「健康食品」の利用に関する実態調査報告”(平成24年5月公表)に基づく食品への機能性表示に関する前向きな検討の必要性に関する意見書等を発信している。このような状況を踏まえて成分・機能性表示の種類の拡大につなげたいものである。

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