Doctor’s LABOトピックス

オイスターと睡眠改善を再考する

レム睡眠の試験データこそ
重要!「2009年睡眠学会の衝撃」が種を明かす

既刊JHMの oysterレポート「経済活動の重要なバロメーター~オイスターにまた一つ睡眠改善のエビデンス」(106号)が読者から大きな反響を呼んだ。オイスターとは、渡辺オイスター研究所の牡蠣肉含有食品「ワタナベ活性型オイスター」であることはいうまでもない。深刻化する「睡眠障害」からもたらされる経済損失が3.5兆円にのぼるとする試算から、「不眠対策」はまさに喫緊の課題として関心が高まっているからに他ならない。この課題に真っ向から挑戦してきたのが他ならぬオイスターで、睡眠改善に及ぼす有効性試験を積み上げてきた。そして既報のとおりは、先ごろ同社では、主観的指標と共に客観的な指標を用いたプラセボ対照二重盲検比較試験で、さらに信頼性の高い「睡眠改善効果」を明らかにした。POMS(気分評定尺度)による主観的指標に加えて客観的な指標として用いた脳波解析から、オイスターを摂取することで、ストレス、疲労感の軽減と共に、有意な睡眠の質の向上をはかられることが立証されている。とりわけ興味深いのが「浅い眠り」レム睡眠、「深い眠り」ノンレム睡眠共にプラセボ群に比べ、オイスター摂取群で有意に高値を示したことだ。心身ともに健康を維持していくためには、レム睡眠、ノンレム睡眠をバランスよくとることは欠かせない。同社では「ストレスを感じ、睡眠に問題を抱える人に対してオイスターが気分の改善、日中の覚醒困難の改善そして睡眠時間の増加と睡眠深度の改善とストレスを軽減するレム睡眠をはかることが示唆された」と考察する一方で、とりわけ今まで過小評価をされてきたレム睡眠の改善にも注目する。そのワケ?を試験結果をもとに再び考えてみたい。
2009年、アメリカ睡眠学会にある衝撃が走った。世界から集った研究者、臨床医が固唾をのんで聞き入った米カルフォルニア大のウォルカー博士の研究発表である。要約すれば「レム睡眠にこそ情動ストレスの解消プロセスがある」とした講演だった。
博士らの研究チームは、仮眠にレム睡眠を含む被験者、そうでない被験者に分け、「恐れ」「悲しみ」「怒り」「幸福」から構成される顔認知課題を与えた実験を行った。その結果、レム睡眠を含む仮眠をとった群で「恐れ」「怒り」「悲しみ」の情動反応が低く、逆に「幸福」の反応は高くなる傾向を示すことを明らかにした。
そして博士は「情動ストレスの解消にはレム睡眠出現量とレム睡眠時に生じる右前頭前野有意のθパワー値が大きく関与している」として、それまで過小評価されてきたレム睡眠がノンレム睡眠と同じように重要であることを投げかけた。
この発表以来、睡眠研究におけるレム睡眠の位置づけは飛躍的に高くなる。もちろん今世紀にはいってもこの研究はさらに詳しく続けられていることはいうまでもない。
そしてここにきて、学習後にレム睡眠の割合が増加し、レム睡眠を抑制すると記憶保持が損なわれるという行動学研究の報告もされることになる。こうした解明によって「レム睡眠中に記録の固定と整理が行われる」こともわかってきた。つまりレム睡眠が不足すると記録が整理できないばかりが、嫌な記憶も捨て去ることができないケースも生じ、ストレスを抱えた状態になってしまう可能性がある。
いうならば深い眠りのノンレム睡眠(第1周期でまとまった成長ホルモンを分泌し脳細胞の修復する)と、レム睡眠(記憶の整理とストレス除去)は、心身ともに健康を維持していくため欠かせない「快眠」のための車の両輪といえよう。
そして、ここにこそオイスターの「睡眠改善」に及ぼす象徴的なエビデンスが凝縮しているといってもいい。
既報のとおり、その研究結果では、レム睡眠時間で2週目の被験食群が80.7+-3.8分、プラセボ群が68.1+-4.0分と、オイスター群が明らかに高値を示している。それぞれの変化量でも有意差が認められた。またノンレム浅睡眠の変化量でも、1週目の被験食群が+13.2+-23.9分に対して、プラセボ群ではー6.7+-21.1分と、有意差が認められた。さらに第一周期のノンレム睡眠時間では2週目で被験食群が71.1+-17.1分に対して、プラセボ群で57.9+-12.9分と有意に高値を示している。
ここ最近、警鐘が鳴らされる抗不安薬や睡眠剤などの大量処方による依存症患者の急増は、その多くがベンゾジアゼピン系薬剤だ。その薬効メカニズムから一時的な対処療法で、睡眠剤は「自然な眠り」をもたらさずかえって常用はリスクが大きい、との指摘が途絶えることがなかった。
だからこそオイスターにかかる期待は大きい。

前号で報じたオイスターの睡眠改善を示す研究成果

試験ではアテネ式不眠尺度(5項目からなる質問によって不眠診断を行い、総合加算得点6点以上が不眠症に分類される)が6点以上の30名を選択し、披験食群15名(平均年齢43.5+-8.1、男性7名、女性8名)、プラセボ群15名(平均年齢43.0+-7.6、男性7名、女性8名)に、牡蠣肉エキスを一日3000mg(12粒)、4週連続して摂取してもらった。主観的指標はPOMS(緊張、抑うつ、怒り、疲労などの6つの尺度から気分や感情の状態を測定。40~60点が健常)とPSQI-j(ピッツバーグ睡眠質問票を用いながら、一方で客観的な指標の脳波測定を行った。
その結果、POMSでは摂取1週目の被験食群で「不安、緊張」「抑うつ」『怒り・敵意』の値が、プラセボと比較して有意に低値となった。またPSQI‐jのC7(日中覚醒困難)では、被験食群において有意に低下し、プラセボ群との群間比較においても有意に低値を示した。
一方、客観的な指標として用いた脳波解析(携帯型脳波計により摂取開始日1週間前、摂取1週目、2週目、3週目、4週目の脳波を測定した。それぞれ月曜の夜から金曜の朝までの連続4日間測定し、そのうちの3日分のデータ解析を行った)では、被験食群の睡眠時間が摂取前(329.7+-96.4分)から1週目(356.4+-82.1分)、2週目(367.0+-85.8分)と群内で有意な増加を認めている。また睡眠時間の変化量でも、被験食群の値はプラセボ群に比べてそれぞれの週において有意差が認められた。
解析では全睡眠時間の変化量についても比較したが、被験食群の群内においても、またプラセボ群と比較してもいずれも有意差を認めている。レム睡眠、ノンレム睡眠での有効性は本文のとおり。

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