Doctor’s LABOトピックス

ハマナスの機能性に迫る

植物は、必ず生命維持で必要な「機能性」をもつ。
花弁には豊富なビタミンCなど他を圧倒する含有量、生体内で他成分と結合して安定化・保持される。

高い抗酸化活性から糖尿病、高脂血症の抑制作用など、
「ブラックボックス」(薬効)の扉を開くルーツは先人の知恵にあり。

「胡地養生考」が教えるアイヌの伝承療法から北見工業大・山岸ら研究チームが
解明に進む

中性脂肪の抑制試験ではトリグリセライド値が大幅に低下。
また消化酵素の働きを抑制しダイエット効果も。
整腸作用では便臭、加齢臭の改善も立証される。

ハナマスの効能とは

先人の知恵に学べ!とはよく語られる教訓である。

ハマナスの薬効を示す記録書「胡地養生考」が秋田県立図書館に蔵書として残っている。綴られる記録はアイヌ民族の知恵から生まれたハマナスの花の効用を書きとめたものだ。

執筆者は秋田藩の蘭方医・岩谷 雀達で、当時の北海道の地・蝦夷をロシアの侵略から守るために秋田藩士と共に派遣された医者である。

「アイヌの民族はハマナスの花をお茶にして朝夕飲んでいる。その効用は水腫病の治療に極めて有効である」と記録されていた。
この記録をもとに、現代科学のメスをいれたのが北海道の北見工業大学の山岸

喬らの研究『伝統医学とバイオメディカル技術による生活改善食品の開発』
チームだった。

まず研究では「胡地養生考」に書かれている植物のビタミンC含有量を調べると、大根(18.8mg/100g)、小豆(4.9mg/100g)、ゴボウ(1.1mg/100g1)に比べ、ハマナスが63.4mg/100gと他を圧倒していることがわかった。しかも、ハマナスのビタミンCが熱に極めて安定的であることも明らかになっている。

また、通常摂取するビタミンCは水溶性のため血中に長くは留まらない。しかしハマナスのもつビタミンCは体内で他の成分と結合して安定化するため生体内に保持されやすい特長をもつ。因みに同書に出典されていない他の果物、野菜類などに比べてもハマナスのビタミンC含有量は決して見劣りないどころか、勝っている。

こうしたことから、ハマナスが体内の活性酸素を除去し抗酸化作用をもつことが立証され、研究チームでは水腫病に対する有効性についてもある一定の根拠があると推察した。

抗酸化活性をもつ植物成分には他にも、多くの機能性、有効性が期待されており、ハマナスもその例にもれない。薬効として期待される作用範囲は糖尿病、美白やしわ予防などの美容効果、高脂血症、抗アレルギー作用、皮膚老化、眼の老化予防などがあげられる。

一方、研究チームではさらにいくつかの〟薬効〟を見出している。
血中の中性脂肪を下げる作用を検証したところ、ハマナス成分による試験食の1か月の摂取でドリグリセライドの値が500mg/dlが150mg/dlまで低下したという。また被験者23人中5人で悪玉コレステロール値が下がり、平均LDL値の減少は1か月でー22.8という結果をみた。

またでんぷんの吸収を抑え、ダイエット効果が期待できる試験結果も明らかになっている。
それによると、被験食ハマナスと対照群にマイカイ、グァバ、リンゴポリフェノールを比較すると、消化酵素のα―グルコシダーゼ、α―アミラーゼともにその働きを阻害するという結果を示した。

腸内への正常化作用も見逃せない

一方、ハマナスには腸内環境を正常化する働きもあることがわかっている。
ハマナスには抗菌作用をもつポリフェノール類が豊富で、これが腸内の悪玉菌を抑えて、腸内環境を整えるビフィズス菌を増やしていく。試験ではハマナス食を摂取した6人のビフィズス菌と大腸菌の変化を調べたが、うち5人が摂取後、大腸菌よりもビフィズス菌が増加したという。
腸内環境に及ぼす作用は、便臭の抑制や加齢臭に対する改善作用にも、良好な結果をもたらしているから興味深い。

便臭成分の抑制試験では、ddy系雄性マウスを使った動物実験を行っている。マウスは無菌制御された飼育環境で育った7週齢を使っている。
その結果、ハマナスエキスを経口投与した群と蒸留水の群とでは、便臭成分アンモニアトリメチルアミンを測定値に明らかな差が出た。3日目の測定値は、ハマナス群で10ppm(アンモニア)、7ppm(アミン類)であったのに対して、蒸留水群ではそれぞれ25ppm,20ppmと高い値を示した。

加齢臭の改善試験ではボランティに対して、ハマナス花の加工食品を朝夕2カプセル服用してもらい2~3日後のNonenalのピークが消失した(綿棒でボランティアの両耳の中をなぞり、それをガスマス分析GC-Massにかける。臭い成分ピークの変化、消失をみる)。
この他にもハマナス花弁の機能性を示す作用は数え上げればきりがない。ご興味のある読者は、一度関連の文献などで調べてみてはどうだろうか。
可憐な花を咲かせるハマナスも、北海道の極寒の冬を耐え忍ぶ我慢強さをもっている。そんな花だからこそ、こうした自らを守る強い薬効という「武器」をもっているのかもしれない。

人間にも共通する道理といえよう。病気に負けない、打ち勝つ最大の武器は「自然治癒力」であると、統合医療ではかねてから説く。

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