Doctor’s LABOトピックス

「睡眠障害」で経済損失3.5兆円

「不眠」がもたらすリスクは生活習慣病まで及ぶ

震災、経済不況、社会保障・税に対する将来不安などを反映して、いま社会全体が閉塞感を抱えているといってもいい。その影響からか?不眠症や睡眠不足に悩む人が急増している。

日本大学(医)精神神経医学教授の内山 真医師によれば、この睡眠障害によって、欠勤、遅刻、早退、作業効率などの「生産性の低下」や場合によっては「交通事故」を引き起こすなど、さらにその経済損失は計り知れないという。

労働一人当たりの年間生産損失額から割り出された全体の損失額は、実に3.5
兆円にものぼるというから驚きだ。さらに「不眠」がもたらすリスクは経済損失だけに留まらない。

生活習慣病の危険因子になることも明らかになってきた。こうした中、(財)精神・神経科学振興財団と日本睡眠学会が共同で、睡眠の重要性を啓発する一環として「睡眠の日」を制定。草の根の啓蒙に動き出す。

睡眠障害が欠勤・遅刻や生産性の低下に!

「睡眠」の良し悪しは経済活動の重要なバロメーターの一つといっていい。日本大学(医)精神神経医学教授の内山 真医師が詳細なデータを基に算定した、睡眠が及ぼす経済損失額がそれを裏付けている。

それによると労働一人当たりの年間生産損失額から割り出された全体の損失額は、実に3.5兆円にものぼるというから驚かされる。

調査は化学メーカーの従業員4078人からの回答を得て分析(うち有効回答3075例)、性別・年齢・業務などの基本情報、睡眠時間や寝つきなどの「睡眠状態」、勤務中の眠気の頻度やその影響による欠勤・遅刻・早退・作業効率などの「生産性」そして、交通事故の有無などについて解析した。

その結果、「寝つきが悪い」「深夜や早朝に目が覚めてしまう」人は、男女とも月平均2~3回、勤務中に眠気に襲われることがわかった。また、眠気のある時には、眠気のないときに比べ、作業効率が男性で40.1%、女性で37.0%の低下をまねくことも判明した。

この結果をもとに、「眠気に問題のある人とない人の頻度の差」に「眠気のある時の作業効率の低下率」と「年間給与」を掛けて、一人あたりの年間生産損失額を割り出していくと、男性で25万5600円、女性で13万7000円がはじきだされた。
睡眠に問題のある労働者全体の経済損失額は、この数字から、約3兆665億円と推計された。

一方、睡眠が原因の欠勤、遅刻、早退回数それぞれに給与を掛け合わせた年間損失額は、総額1,616億円と試算され、不眠・寝不足などによる交通事故の損失額は2,413億円となる。これらを合算すると4,029億円にも達する。

こうした損失額を総合計すると約3兆5千億がはじきだされていく。
睡眠障害によって、欠勤、遅刻、早退、作業効率などの「生産性の低下」や場合によっては「交通事故」を引き起こし、さらにその経済損失は計り知れない。たかが「睡眠」と馬鹿にはできない深刻な社会問題だ。

大手医薬品メーカーが全国4,000人の成人を対象に調査した「不眠に関する意識調査」でも、その4割に不眠症の疑いがもたれた。そして今、こうした不眠を抱える人にさらに警鐘を鳴らす研究データが突きつけられている。
米スタンフォード大の研究チームでは、睡眠不足が食欲をあげ、結果的に肥満を引き起こすことを明らかにした。また別の研究では、寝つきが悪い人、途中覚醒がある人では、健常者に比べ高血圧を発症するリスクも2倍になることが報告されている。

「ポーランドでは高血圧患者の約半数が不眠症と判定されている。血圧と不眠は、相互に影響しあっている」と専門家は指摘する。

転ばぬ先の杖! 健康に多大な影響を及ぼす「睡眠」の重要性をもっと知ってもらおうという動きも始まった。(財)精神・神経科学振興財団と日本睡眠学会が共同で、睡眠の重要性を啓発する一環として「睡眠の日」を制定。草の根の啓蒙に動き出す。

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