Doctor’s LABOトピックス

医療を邪魔しないメディカエステ・デンタルエステ

「メディカルエステの台頭はエステ産業の信頼度高まる」(サロン関係者)
「エステ顧客が、美容医療、デンタルに対して需要を生む」(医療サイド)

 エステティック見本市「ビューティーワールド」に医療関係者の来場増える

当会では2009年から、美容医療などやデンタルクリニックがメディカルエステ、クリニカルエステを併設する動きを報じてきた。今この傾向は著しい。かつて、医療の側からも、エステ業界からも互いの市場を「食い合う」として、こうした動きをけん制し警戒心を抱いてきた。しかし「メディカルエステの台頭」はエステ市場の信頼度をアップさせる好機と捉えるサロン関係者が増え、一方でクリニック側もエステに通う顧客が美容医療、デンタルに対しても潜在需要は高いとみる。市場を争奪しあう時代から、得意とする技術とマーケティングをお互い補完しあいながら、協調する時代へと変わってきている。医療とエステの市場は共有できる。そしてエステ術は決して医療を邪魔しない。

エステティック見本市「ビューティーワールド」に、医療関係者が熱い視線

国内最大のエステティック見本市「ビューティーワールド ジャパン東(BWJ EAST)」が今年も東京ビッグサイトの4ホール(東)を使って5月16日(月)~18日(水)の3日間開かれた。国内外から362社、808ブースが会場に並んだ。出展品目ごとに分けられた12のゾーンにエステ・理美容・スパ関連の美容器、化粧品ほか多数の商材、またサービス、技術情報が展示され、震災の影響から出展数は減少したものの、中国、台湾、韓国、ブルガリア、フランス、イタリア、イギリスなどからの海外出展も目立った。

主催のメサゴメッセ・フランクフルトによれば、3日間の来場者総数は43,218名。やはり大震災がイベントに大きく影を落としたかたちとなり、昨年を約1万人下回った。

しかし今年、際立ったのがその来場者傾向だ。専業サロンやネイルサロン関係者の“主流派”がおよそ半数を占める中、美容医療やデンタルクリニックなど医療機関やサロンを併設するクリニックなどから足を運ぶ来場が増えている。専業の理美容サロンの8%(約3,600人)に迫る2,800人(6・5%)ほどが会場に訪れた。

こうした医療関係者が立ち寄った出展小間では化粧品、サロン備品そして美容機器に、関心が高い(数社のブース関係者からの声)という。

 

エステ施術はコメディカルが利益生む、設置には法務対策を

かつての「美容医療の顧客をサロンに奪われる」とする警戒心はもう過去の世界。クリニックが積極的に、エステの潜在需要を掘り起こし、そのためにクリニックにエステサロンを併設する時代に入っている。美容外科クリニックの空きベッドを利用したエステティックの施術は、ドクターではなく、コメディカルスタッフが行うことで、ドクターの拘束時間外にもサービス提供することが出来るため、クリニック経営の有効な手段とみるとことが少なくない。

もちろんクリニックとサロン、あるいは歯科医院とサロンを経営する際には、医療法上の法務対策は欠かせない。前述のようなケースでは、美容医療の治療後のスキンケアの処置としてエステを活用する。専属もしくは契約でエステティシャンを雇って、エステの施術を行う。一方、歯科医院が施設中に「エステサロン」として導入する場合は、法人の傘下に美容皮膚科医などを管理責任者として置きながら、美容医療の治療のプロセスにエステの施術を組み込むことが求められる。しかしその設置に関しては都道府県単位で許可の在り方は少し異なるという。

医薬品の大手流通卸の開業支援チームによれば「歯科診療とエステの導線を分け、同一フロアでも中間に階段などの造作をすれば、認められるケースもある」ようだ。

いずれにしても、医科そして歯科からの「メディカルエステの台頭」の流れは止まらない。

 

メディカルエステ開設での関心は、関連商材だけでなく「エステ経営」にも

見本市で医療関係者から関心を集めたのは、コメディカルでも扱える美容機器だ。

今年は、圧倒的に多数だった脱毛関連のインテンス・パルス・ライトは少数派となり、その空隙をエレクトロポレーションとキャビテーション、RF高周波などの原理を採用したフェイス、ボディケア装置が目立った。

エステのみならず美容医療にも浸透する『インディバ』の知名度は高い。しかし今年、この需要を追随するRF装置が多くみられた。しわ、たるみや肌のハリに作用させる他、体脂肪などに対して高周波の作用で脂肪を融解させる施術の用途は多い。クニックでは馴染みがある装置だけに、メディカルエステとして活用できる機種を探す関係者が少なくなかったようだ。本紙でもたびたび紹介しているARTISTICのRF機器や、「RF BE‐4000」(メディキューブ)、「温深」(エメラル)などが展示された。ARTISTICは、RFとキャビテーションの機能を一台におさめた複合機も展示、医療関係者から関心を集めた。

実は、医療系の来場者にとって単に装置そのものだけが重要ではない。これらの施術を、エステティック業界ではどのように解説しているのか?、あるいはサロンでどのように顧客の心をつかみ、専門用語を上手く控えて、分かりやすく説明しているのか?さらには、出力の低い機器を使わざるを得ない事情から、万が一のクレーム対応のための効果の説明などについてブースに立ち寄って、聴くケースも少なくない、と出展社は話す。

いち早く市場に新しい美容機器を投入し、装置メーカーというイメージの強い先述のARTISTICだが、実は直営サロンを経営するなど、ソフト面にも様々なノウハウを有している。最近では、デンタルクリニックが収益をあげるためのメディカルエステ、デンタルエステの導入に際して、開業プロデュースを投げかけている。

医療からエステに参入する動きを捉え、装置とあわせて経営ソフトという付加価値を販売する事業戦略は、他社メーカーも見習うべきマーケティングといえよう。

展示場には、美顔機の数々も並んだ。超音波とイオン導入の作用を組み込んだ「スクラーバー・ピコ」(KSL)、エレクトロポレーション、メソポレーション、LED、EMS、高周波の5つの機能をもたせた「DR Arrivo」(ARTISTIC),など新たな小型の美顔機が登場。エステではまだまだこのジャンルの機器需要は根強い。

一方、“ころころローラー”として通販市場で売れた、いわゆるフェイスアップのためのローラー市場に、初のホルミシスイオンを出すローラー「セラムアンジェ」(ドクターセラム)が出品された。大手エステチェーンにはすでにOEM製品で採用されるが、今後、美容医療への取り扱いも期待されそうだ。

医療の分野でも評価される「炭酸泉」だが、エステの世界でも最近、導入の動きがみられる。ビューティーワールドの会場にも数社から高濃度炭酸泉を発生させる装置が出品された。皮膚に近い毛細血管や細動脈に炭酸ガスが吸収され、血管拡張や血液循環を促すという。美肌、温熱作用やデトックス、新陳代謝などに有効とするエビデンスをもつメーカーもあらわれ、メディカルエステゾーンに活用できるメニューとして注目された。「SPARKLE」、「泡泉」など炭酸泉発生装置が並んだ。

 

医療と並列できる「エステ」の導入

「原点は歯科医院の象徴である、院長に依存しない組織と業務拡大を考えた」として、歯科経営に加えてエステサロンの経営をする、みたむら歯科医院の三田村歯科医。自らエステティシャンの資格を取得して、デンタルクリニックのある富山とは別に、東京都心にサロンを構えた。

そしてサロン展開をするためのCIの構築、差別化戦略の研究、事業理念と出店、収支、サービスメニューなどの計画と実行、さらにはコンセプトやターゲット顧客などのマーケティング、どのように顧客満足度をはかるか?、価格戦略と集客商品(施術)、利益確保商品(施術)、アップセル(コース売り)、クロスセル(別メニュー、物販)、そして綿密な集客戦略など、およそ歯科経営では無縁のマーケティングをしながら実践していったという。

三田村DDSが構えた都心での小スペースでは、固定客をしっかりと抱えている。今では「ヘビーユーザー」が少なくない。

歯科医が行うエステ術だからこそ、信頼を寄せる顧客が多い。そしてメニューの“売り”は、歯科領域に精通しているからこそできる「デンタルエステメニュー」で、およそ10種ほどの興味深い施術コースをもつ。代表的なものに、小顔にするための表情筋トリートメント、GUMマッサージそしてリップエステなどがある。

三田村歯科医が独自に考案した施術が「リップエステ」。これは従来の唇に薬剤を塗るだけの手技ではない。前述の美顔機「Dr Arrivo」を導入機としてリップに用いた施術である。唇に薬剤を塗布してこの美顔機を動かす。そしてわずか5分、見事に上唇がふっくらと蘇がえるから驚く。こうしたメニューは、決して歯科診療を邪魔しないどころか、このエステ術を受けたクライアントが今度は歯科治療へと受診するケースも少なくない。

医療とエステが競合する時代から、双方の技術を邪魔せず、クライアントを共有できる「メディカルエステ、デンタルエステ」開設の時代へと変わっている。

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