Doctor’s LABOトピックス

30分フィットネスクラブでロコモ・肥満対策

会員数60万人と急成長のカーブス、
医療機関との提携も視野に

40代以降の女性で利用増
住宅地に40坪施設を展開、
「敷居の低いトレーニング・ジム」で人気

マッサージ・鍼治療などの
数十万円の出費節約も

会員向け会報誌で関節系サプリ拡販も

店舗数1365店舗、会員数約60万人(いずれも平成13年10月末現在)と、飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長を遂げている女性専門の30分フィットネス「カーブス」。アメリカで生まれ「世界最大規模のフランチャイズ」としてギネスブックにも登録されており、すでに世界80か国に展開している最大級のフィットネスチェーンだ。日本に上陸したのは2005年。2006年3月から本格稼働し、2か月で会員数が一気に1万人を超えた。人気の秘訣は「女性専用・30分間トレーニング」という今までにないコンセプトだ。日本では特に、40代以上の女性のロコモ対策として注目されている。本紙では、日本法人カーブスジャパンの齋藤氏に最新の事業戦略を聞いた。

女性専用・30分間トレーニング「カーブス」

日本の「カーブス」設立に当初事業に携わり、8年で約60万人の会員数にまで拡大させたコアメンバーの一人が齋藤氏である。
現在、執行役員戦略企画部長の職責を担う齋藤によれば「最初の頃は、メンバー全員で車に乗って現地に行き、どの場所に出店するのがよいか検討していました」と当時のことを振り返る。1店舗目は戸越公園前の商店街に、2店舗目は都立大学駅近くの住宅街に、そして3店舗目は町田近郊にロードサイド店として出店。日本にないモデルだったため、全てがテストマーケティングでありトライアルだったと話す。
前述のとおり「カーブス」は、「女性専用・30分間トレーニング」のフィットネスとして登場した。現在会員の90%以上は40代以上で、その中でも50代、60代の女性の利用が多い。「カーブス」のキーワードは、筋肉だ。健康のためにもダイエットのためにも、筋肉を維持することが大事だと話す。
米ベイラー大学と共同研究の末に開発された30分間のプログラムは、筋力トレーニングと有酸素運動を30秒ずつ交互に行うオリジナルのサーキットプログラム(筋力運動+有酸素運動+柔軟運動)だ。まずは30秒間、上半身の筋力トレーニングを行い、その後30秒間有酸素運動を、そしてその後、今度は下半身の筋力トレーニングを30秒間、さらにもう一度30秒間の有酸素運動を行うという流れだ。普段の生活では運動する機会も減ってしまう40代以上の女性にとって、カーブスに通うことは、生活習慣病の予防、腰痛やひざ痛、骨粗しょう症等の予防・改善、ダイエットにつながるという。

エビデンス多数。ロコモ対策、サルコペニア肥満対策にも

同社では、さらに多くの外部機関との共同研究をはじめとして積極的に自社サービスの効果実証を行っている。
2013年10月には、東北大学加齢医学研究所と共同研究を行い、短期間のサーキットトレーニングが高齢者の認知機能に及ぼす効果について科学的な検証を発表している。これによると、同社が提供する30分間のサーキットトレーニングを4週間継続することで、実行機能・エピソード記憶・処理速度など広範囲な認知機能を改善することが実証された。このサーキットトレーニングはすでにカーブスの約60万人の会員が行っているプログラムであり、高齢者でも取り組みやすいため、健康維持、ロコモ対策だけではなく、今後は高齢者の認知症予防や認知機能リハビリなどへの応用も期待される。
また2008年には独立行政法人国立健康・栄養研究所との共同研究を行い、カーブスのサーキットトレーニングを行うことで、メタボ対策や介護予防、さらには健康的なダイエットに役立つということも分かっている。
そして現在は、筑波大学と共にサーキットトレーニングがサルコペニア肥満対策にも有効かという点を研究しているという。サルコペニア肥満とは、筋肉減少と肥満が合併した状態を指す。高血圧になる可能性が女性は2.3倍、糖尿病になる危険因子の値も19倍になる。さらに転倒、骨折、寝たきりになるリスクも高いという。その他、地方独立行政法人東京都健康長寿医療センターと共同研究を行い、サーキットトレーニングを行うことで介護防止に結びつくかという研究を行っている。
「高校の体育の時間以来、それほど運動をしてこなかったような40代以上の女性の方々が、お友達と一緒にカーブスに通うことで、結果としてメタボやロコモ対策、そして認知症予防に繋がってほしいと思っています。また安心して使っていただきたいので、きちんとエビデンスも取り、しっかりとしたプログラムであるという点を客観的にも実証したいと考えています」と、齋藤氏は話す。

健康になる以外にもメリットがある!?

カーブスがこれほどまで会員数を増加した背景は何か。
その背景には、「女性専用・30分間トレーニング」という明確なコンセプトが関係している。全国に1300店舗以上あるカーブスは、一店舗あたりの面積は40坪程度と小規模で、住宅地を中心に出店している。予約をしなくてもいつでも好きなときに行くことができ、そのままプログラムを受けられる。さらにカーブスは、メイク不要で鏡もない。今までジムやフィットネスクラブは価格が高く、駅前などにしかないため利用しないという人が多かったが、まさにカーブスはそのモデルを打ち崩したと言えよう。家の近くにある女性専用のジムなので、異性に気を使うこともなく、気軽に健康維持、ダイエットのために通えるジムなのだ。
そんな人気のカーブスだが、実は広告展開を積極的に行っていない。会員の紹介での入会がほとんどだという。だが、運動に縁がなかった女性たちが多いのですぐに入会することは少なく、会員の身体的な変化を実際に数か月見続けることで、入会を決めることが多い。カーブスに入会すると、1か月程度で「階段の上り下りが楽になった」「歩くのが少し速くなったと言われた」「しゃがんでからすっと立ち上がれる」といった変化を感じる。その他にも腰痛や肩こりなどの改善がみられることもあり、その後2、3か月後に体重が変化をするケースが多い。こういった会員の変化を何度か見聞きするうちに、周囲の友人たちも入会を検討し始めるのだという。
さらに、カーブスに通うことで健康維持にかかる出費が節約できるという入会者も少なくない。身体が健康になることで、たとえば月に3~4万円かかっていたマッサージ代や鍼治療や電気治療代が不要になり、年間数十万円の節約に成功しているというのだ。マッサージ代だけではなく、足腰が弱いため移動に使っていたタクシー代やガソリン代等も節約できたというケースも多く、運動をすることで身体機能が向上する以外にもメリットがある点は、とても興味深い。
カーブスでは2007年から、会員向け会報誌として「カーブスマガジン」の発行をスタートした。自社サービスに関する情報に限らず、健康や美容、食、旅行など様々な情報を掲載している。さらに翌年には通販事業を開始し、40代以上の女性にあったウェアやシューズの販売を行っている。また健康維持の一環としてグルコサミン、DHA等のサプリの販売も実施しており、いずれも会員から好評を得ているという。
通うことで「健康」になるだけではなく、生活全体をも改善することができる「ハブ」の役割として、カーブスは幅広い形で貢献しているようだ。

医療提携に積極的に展開予定

メタボ、ロコモ対策に効果があるとエビデンスベースで実証されたカーブスのサーキットプログラム。2年ほど前からは、整形外科学会等とも連携しロコモ対策について会員への告知も積極的に行うようになったという。今後も寝たきり予防、運動器疾患対策としてのプログラム利用を積極的に行うと同時に、医療機関との連携も行っていきたいと話す。
店舗ベースで地元の整形外科医等と連携しているケースもあるがまだまだ全社的には行っていない。ドクターが安心して患者に紹介できるサービスとする意味でも、医療機関と提携した共同研究を引き続き行うという。
高齢化社会、運動量低下、そしてロコモ対策やサルコペニア肥満対策が問われる中、40代以上の女性をターゲットにしたカーブスの新しい事業展開は今後さらに注目されるだろう。

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