Doctor’s LABOトピックス

エステサロン 景表法違反の事例相次ぐ

公取から消費者庁に管轄官庁移行が背景に

「細胞の若返り」「小顔矯正」など科学的根拠なし
医療、理美容などに比べ、資格と技能に優位性なく過大な宣伝、営業増える

前号110号で、「美容医療は危険!リスク、トラブルを意図的に強調する」ような消費者庁のニュースリリースについて報道した。行政が業界の悪評をことさらに扇動するかのようなこの公開文書に対しては、その後、業界関係者から異論反論が相次いでいる。一方、こうした「消費者クレーム」で美容クリニックにも増してクローズアップされてきたのがエステサロンである。その業務が医療行為ではないことはいうまでもなく、加えて施術範囲がクロスする理美容や整体などに比べ、施術者の資格や技能に優位性がないため、勢い過大な宣伝や営業、場合によっては違法な施術までも横行することは否めない。理美容に比べエステの施術料金は高額であることから、違法なPR表示で誘引し非医療でありながらリスクを伴う施術をしてしまう。こうしたことが消費者からのトラブル件数を増やしているといえよう。本稿では、こうしたエステサロンの現状をリポートする。

今年になって、2件のエステサロンの景品表示法違反が明るみに出た。
1件は今年3月、某大手エステサロンが自社の美顔トリートメントについて、折り込みチラシやWebサイト上で「細胞レベルでの若返り」と謳った。だが同社では、「細胞レベルで若返りが可能である」という点について効果測定を行っていなかったために景品表示法に違反。エステ運営会社には改善指示が出た。さらに同社の場合は、期間限定のキャンペーン特別体験価格が、適用期間が終了しても同じ金額で提供されていたという点も違反対象となった。
さらに今年4月には、「小顔矯正」「即効性と持続性に優れた施術」などを謳ったエステサロンが、裏付けとなる根拠を提示することができなかったとして消費者庁が措置命令を下している。具体的には、景表法第4条の「優良誤認」の行為とみなし、消費者にその旨を周知すること、さらに再発防止策を講じ従業員に周知することなどを命じている。
有名芸能人を使って大々的にTVCM等も行うような知名度の高い大手エステサロンでさえも前述のような不適切な広告文の使用や価格の不当表示を一部しており、エステ業界全体への一般消費者の不信感が増大するであろう。とくに期間限定のキャンペーン価格の表示については、消費者に限定感を彷彿させ「今しかできない!」「キャンペーンだから今行かないと!?」と気持ちを煽るような内容だ。これは単なる表示ミスではなく、限定感、お得感を出すことで消費者心理を欺いているともいえる。
エステ業界には医師や美容師のような国家資格はなく、悪徳なサービスを提供する業者は依然としてなくならない。「お客様から信頼されるサロン経営を目指す」として複数の団体がエステサロン経営の協会を運営しているが、業界大手がこの状態では消費者も何を信じればいいのかわからないのではないだろう。
景品表示法は消費者庁が定める法律で、不当表示や過大景品などを規制し、市場の公正な競争を確保することで、消費者が適正に商品・サービスを選択できる環境を作ることを目的としている。昨年は、東証1部上場企業の大手通信販売会社(グループ会社でエステサロンも経営)に対しても、第6条の規定に基づき措置命令を行なっている。
この法律、2009年までは公正取引委員会が管理していたが、同年9月に消費者庁へ移行された。その際に「排除命令」は、消費者庁によって「措置命令」という名称に変更されている。(前述の大手エステサロンの措置は「改善命令」になる)
もともと公正取引委員会が管轄する法律には「独占禁止法」という大きな法律があり、公正取引委員会管轄の時代はこの法律を以て各業界監視を行ってきていたため景品表示法による取締件数はそれほど多くはなかった。だが数年前に景表法が消費者庁に移行されてから、本法律による措置が増えているそうだ。
エステサロンに限らず美容医療業界においてもWebやチラシでの広告表現については気を付けていくべきであろう。実際に、今年3月には同じ消費者庁から都内の美容医療クリニック4事業者のインターネット上の広告について、消費者を誤認させるおそれのある表示であるとして、景表法に基づき、表示の改善を指導している。
指摘された内容は、「脂肪吸引50%OFF」がほぼ1年中実施されていた点(有利誤認表示)、モニター調査ではマイナス2センチ程度だったものの「ウエスト-5センチメートル引き締め効果」と記載していた点(有料誤認表示)などだ。
エステ、美容医療にかかわらず、競合との差別化や優位性を表現するためには、相応のインパクトある言葉が必要になる。技術力がいくらあっても、それを消費者に伝えることができなければ集客にはつながらないのは明白な事実である。
だが残念なことに、この業界に関わる広告代理店も制作会社も、きちんと景表法や薬事法を理解している人間は、まだまだ少ない。
自社のサイトの文言が法律違反となれば、これはもう他人事では済まされない。取引ある各種業者はもちろん、ドクター自らも各種法律に関する情報を収集し、目を光らせることが大事だ。自分の身に降りかかる可能性もあるという点をきちんと理解し、Webサイトやパンフレット、広告文についてもリーガルチェックを行う必要があるだろう。

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