最新治療レポート

多くの療法で有効性に根拠なし

厚労省・統合医療の調査研究から明らかに

「効果あり」は鍼療法などわずか
代替療法の中で高い利用率(33.8%)は「サプリメント」

ともすると「統合医療」に対しては標準医療側から白眼視されるケースが少なくない。しかし、先ごろ開催された厚労省の「統合医療のあり方に関する検討会」(独立行政法人 国立長寿医療研究センター・大島 伸一総長ほか構成員9名)の第5回会合で、多岐にわたる統合医療の療法について安全性、有効性に関する科学的知見を本格的に収集していくことが合意形成され、今後、政府、行政主導でより前向きな議論と取組みがされていくことになった。一方で同省は「統合医療の情報発信等のあり方に関する調査研究」(以下 調査研究)での2008年からの4年間のコクランライブラリー報告を踏まえ、主な療法の数と有効性についてその分析が多くの療法で「未確定」であったことを確認。「統合医療」の中には科学的知見が十分なものがある一方で、全く根拠のないものまで混在すると指摘されたため、具体的な今後の取り組みとして国内外の統合医療に関する療法の学術論文を収集する体制をさらに整備していくことや、その拠点に医師をはじめ多職種の関係者が関わり、臨床研究を支援していくことを申し合わせた。こうした中、「統合医療」を推進する上で忘れてはならいのが、その利用状況であることはいうまでもない。検討会では先述の調査研究から明らかになった相補・代替療法の実態調査(3178人)を示し、「サプリメント」が33.8%と最も利用されているとした。回答では13%の「マッサージ」、10%の「整体」とつづく。


コンクラインライブラリーは、英国で1992年に設立されたプロジェクトによって、世界中の臨床研究についてシステマティック・レビューを行う国際ネットワークで、53分野で医学的介入により一定の基準で論文を網羅しながら収集し、評価、批評、要約をしていく。そして作成されたものが文献データベースとなる(*データベースは、ランダム化比較試験関連で世界最大規模。医療関係者からの信頼度は高い)。
この文献データベースから相補・代替療法について主な療法の数と有効性を分析したところ、鍼療法などいくつかで「効果あり」とされたが、多くで「未確定」と判断された。
「効果あり」とされたのはその他マッサージ、太極拳などで、ホメオパシー、エクササイズ、瞑想、ヨガなどは「未確定」とされた。意外なのは漢方でやはり「未確定」とされたがそもそもレビューそのものも少ない。
この結果から、「統合医療」の中には科学的知見が十分なものがある一方で、全く根拠のないものまで混在すると指摘されたため、具体的な今後の取り組みとして国内外の統合医療に関する療法の学術論文を収集する体制をさらに整備していく。
一方、調査研究では、一般人を対象に医療機関以外で提供された利用状況をまとめている。
回答数3178人のうち、「代替医療を利用したことがない」とする回答が33.8%を占め、3人にひとりが利用すらしていない実態が明らかになった。利用経験のある回答者の中で、「サプリメント」が33.8%と最も割合が高く、13%の「マッサージ」、10%の「整体」とつづく。ただ整体やマッサージなどは「利用をやめた」(それぞれ25.8%、24.3%)とする回答者も多く、「効果が感じられない」「お金がかかる」ことが利用をやめた理由として挙がっている(表1)。
調査では統合医療に抱く国民のイメージについても実施されている(3107人)。それによると、理解されている療法では「マッサージ」(40.5%)、「漢方」(34.2%)、「サプリメント」(31.4%)とつづき、理解していないとするものは「ホメオパシー」「温熱療法」をあげる回答者が多い。調査研究で行った別の調査「統合医療を利用する際の参考情報」の中で、医師に相談した人ほど「温熱療法」を利用した人が多く(32.4%)、医師からの紹介、推薦でも「温熱療法」が最も多い(27%)という皮肉な結果も出ている。
いずれにしても、統合医療が公正なかたちで啓蒙され、エビデンスをもとに患者、国民さらには医師に対して広く情報を発信することで、統合医療を適切に選択できることが望ましい。

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