Doctor’s LABOトピックス

エステ「脱毛行為」で法廷闘争

サロン「毛乳頭など破壊せずエステ業務に違法性なし」
検察「熱傷、健康被害は明らかで、厚労省定める医療行為の範囲」

エステサロン本来の施術は痩身、フェイシャル」「脱毛からの脱皮」に向かうか?

エステ業界を揺るがす事件

事件による波紋は大きく、エステの稼ぎ頭と言われる脱毛市場が奪われかねない。「脱毛行為」を巡る医師法違反の容疑で大阪府警に逮捕されたサロン経営者の医師、スタッフらには、「医師免許のないスタッフらは無資格で医療行為を行い、医師はその行為をさせた」容疑だった。このサロンは経営者の医師(脱毛の神様と称される)自らが開発した光脱毛機によって全国20店舗近いサロンを展開し、急成長したところで、〟100%医師が管理するシステムで、永久保証する〟というキャッチで業界に新風を巻き起こした。そしてその脱毛理論、施術マニュアルは周到な準備と対策をしてきたため、非の打ちどころがないと業界では信じられてきた。しかし、およそ2か月後に開かれた初公判でも検察側は「施術によって4人が熱傷を負い、健康被害を被った」として逮捕罪状どおり医師法違反とした。

また大阪府警は畳み掛けるように、同医師ら関係者に対して「医療機器を違法に販売した薬事法違反」の容疑で、大阪地検に追送検をしている。
今後、法廷での論争の争点は、厚労省の「医療としての脱毛範囲とその行為」に絞られていくとみられるが、裁判のゆくえ次第では、エステ業界にとって「ドル箱」である脱毛市場を死守できるかどうかの岐路に立たされているといってもいい。

エステ業界を揺るがす事件

脱毛市場は数兆円ともいわれ、医療脱毛を横目にエステサロンの施術に対する需要は増えることはあっても減ることはない。
「リスクをとるか?」あるいは「効き目が穏やかでも安全を担保するか?」とサロン側でも脱毛業務に対しては意見が分かれるところ。ある意味、今回の医師が経営するサロンは前者の方であろう。

そして彼が開発した光脱毛機は、かねてから業界の間で賛否両論の意見があったことも事実である。医療機器なのか、非医療機なのかという疑問に「厚労省105号通知でいう医療行為にはあたらない」と医師は、多くのセミナー、研修会で主張してきていた。

※10号通知
『機器の属性(医療機か非医療機)に関わらずレーザー光線やその他の強力なエネルギーをもつ光線によって毛根部に照射し、毛乳頭、皮脂線開口部などを破壊する行為は医療行為』

つまり、この脱毛機はその部位への破壊行為を行わない光脱毛機であり、脱毛理論をもつという理屈だ。医師は「この脱毛理論はあくまで法に準拠したもので医師法違反にはあたらない」と強気の構えをみせ、今後司法の場で徹底抗戦するとしている。一方、検察側は原告側が主張する「熱傷の深達度と皮膚照射がどこまでのLayerで行われたか」という立証をすることになった。

事の正否はともかく、今回の事件はサロン業界に激震が走ったことは否めない。今月から施行する消費者庁の消費者安全調査委員会によって、消費者からのクレームに対して関係者への立ち入り検査など、その権限や罰則が強化される。 これは製品、食品の安全性だけでなくエステなどの施術にも及ぶ。今回の事件と別に、一部エステ店などが違法な「脱毛行為」を行うなど、とりわけエステ店が起こす消費者クレームは後を絶たない。
業界自らがきちんとした自主基準やクレームに対する〟自衛の策〟を講じないと、今度はさらに足元から信用を失いかねない事態に陥るかもしれない。

美容医療そしてサロン業双方の発展を望むことは本紙JHMとしてはいうまでもない。しかし明らかに違法な行為でユーザーを惑わし、場合によっては被害を与えることは許されてはならないはずだ。

エステと医療が共存繁栄できる仕組みを

こうしたなか成功するサロンはいち早く、その業態を徐々に進化させていると聞く。「ライト脱毛」を顧客が納得の上で来店し、一方で店側は良質な物販や旅行企画などを行い、顧客のネットワーク化をしながら潜在需要を掘り起し、新たなビジネスを展開しているとこをもある。またエステ側がクリニックと提携して、美容医療とエステの患者(顧客)の共有をはかるところ、さらには美容クリニックやデンタルクリニックがエステ部門の併設を行うケースも増えている。
「競合というものは業界の委縮を招く。だからエステと医療は共存繁栄するためにお互いの理解が不可欠であろう。そのためにも、医療側がどのように考え、どのような治療、施術を行っているかをエステティシャンが知ることは大事だ。JAAS認定のエステティシャン資格講習会はそのために実施している。そして医療とエステの提携を推進するには知識とスキルの向上が重要です」と、JAAS理事の山本医師は話す。

続いて資格コースで講師も務めている、みたむら歯科医院の三田村歯科医(兼エステティシャン)は「そもそもサロン本来の施術は脱毛ではなく、痩身とフェイシャルです。この施術メニューで十分に顧客満足度をあげることができる」という。

↑ページの先頭へ戻る